逢沢大介先生『陰の実力者になりたくて!』の第6巻は、2023年10月にKADOKAWAから刊行された新文芸シリーズの一冊です。本巻の舞台は腐敗の進むミドガル王国の王都。連続殺人鬼ジャック・ザ・リッパーを思わせる存在が現れ、ホラー寄りの猟奇的な空気が漂います。そんな暗い舞台でこそ映えるシドの暗躍と、強さの見せ方にこだわったバトルが本巻の読みどころです。
総合評価 ★4.0|王都の猟奇事件を背景に、シドがジャック・ザ・リッパーめいた立ち位置で暗躍するホラー風味の巻。雰囲気と相性のよさは抜群ですが、物語自体の前進は控えめで、場面を楽しむ巻です。
『陰の実力者になりたくて! 06』はどんな作品?
『陰の実力者になりたくて! 06』は、ミドガル王国の王都を舞台に、秘密結社『十三の夜剣』や腐敗した貴族たちを背景にしながら、シドが「ジャック・ザ・リッパー」のような存在として暗躍していく巻です。
全体の空気としてはホラー寄りで、猟奇事件や連続殺人鬼を思わせる不穏さがあります。一方でミステリー要素は強すぎず、あくまで少し謎めいた雰囲気のあるホラー寄りの巻という印象でした。ホラー寄りの舞台設定、シドの陰の実力者らしい暗躍、王都を舞台にしたバトルや緊張感のある場面がうまくまとまった一冊で、大きく物語が進む巻というよりは、その場の空気やシチュエーションを楽しむ巻として面白かったです。
発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、陰の実力者になりたくて! 06からどうぞ。向いている人
ホラー寄りの雰囲気がある作品が好きな人
今回は王都を舞台にした猟奇事件めいた展開があり、全体にかなり不穏な空気があります。ただし怖さ一辺倒ではないので、重すぎないホラー風味を楽しみたい人には合いやすいと思います。
陰の実力者ムーブをしっかり楽しみたい人
こういう暗い舞台は、シドの振る舞いとかなり相性がいいです。主人公が裏から場をかき回す展開が好きな人にはかなり向いています。
少し猟奇的な事件や裏社会っぽい空気が好きな人
王都の腐敗や秘密結社の存在など、舞台設定そのものに危うさがあります。そうした裏側の空気を楽しみたい人にも入りやすいと思います。
キャラの濃さを楽しみたい人
前巻から出てきたキャラも含めて、今回も印象の強い人物が目立ちます。言動のひどさも含めて妙に印象に残るキャラがいて、その濃さが面白かったです。
強い主人公のバトルを楽しみたい人
今回もシドの強さがしっかり見どころです。特に、相手が実力差を察した上でどう動くかという場面が好きな人には刺さりやすい巻だと思います。
合わないかもしれない人
主人公の陰の実力者ムーブ自体が苦手な人
ここは6巻でも変わりません。作品の面白さの中心がシドの独特なこだわりにあるので、そこが合わないと楽しみにくいと思います。
シリアス一辺倒のホラーやミステリーを求める人
雰囲気としてはかなり不穏ですが、読み味はやはりこの作品らしくコメディ寄りです。張りつめた怖さや本格的な謎解きを求める人には少し違うかもしれません。
人が死ぬ展開を軽さのある作風で読むのが苦手な人
今回も起こっていること自体はかなり重いのですが、作品全体は必要以上に沈みません。そのギャップが合わない人には引っかかる部分があると思います。
物語の大きな前進を強く期待する人
6巻は雰囲気やシチュエーションの面白さが強い反面、ストーリー全体が大きく進んだ感覚はやや薄めでした。展開の進行よりその巻ごとの空気を楽しめる人の方が合いやすいと思います。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
『陰の実力者になりたくて! 06』の見どころは、やはりホラー寄りの空気と、その中で繰り広げられる陰の実力者らしい暗躍でした。
まず印象に残ったのは今回の雰囲気です。王都を舞台に連続殺人鬼のような存在が現れる展開は、これまでの巻と比べてもかなり不穏で、全体としてはホラー色が強めでした。ミステリー要素も少しありますが、どちらかというと謎解きよりは不気味な空気を楽しむタイプの作りだったと思います。
ただ、本作はそこを重たくしすぎないのが面白いところです。起こっていること自体はかなりえげつないのに、シドがそこに入ることでやはりこの作品らしい独特の読み味になります。今回は特に、シドがジャック・ザ・リッパーめいた立ち位置で動くのがこの巻らしい見どころで、暗い舞台、腐敗した権力者たち、猟奇的な事件という要素はまさにシドが映える状況でした。
キャラクター面では、前巻から登場した人物が印象に残りました。詳しくは触れませんが、言動のひどさも含めて妙に目立っていて、メイン級のキャラとはまた違う意味で印象に残る存在です。ああいう濃いキャラがいることで、6巻の空気がより独特になっていた気がします。
バトル面も今回しっかり面白かったです。個人的に良かったのは、主人公に挑む側がただ無謀に突っ込むだけではなく、実力差を察したうえでどう反応するかというところでした。相手の格を理解した上で引くような場面には独特の気持ちよさがあり、強さの見せ方にこだわる本作らしい魅力が出ていました。
一方で、ストーリー全体として見ると、6巻は大きく話が前進したというより、一つの濃いシチュエーションをしっかり楽しむ巻という印象でした。そこは人によって評価が分かれそうですが、雰囲気や場面の面白さが強く、個人的にはかなり楽しく読めました。物語の大きな進展よりも、その巻ならではの空気や場面を楽しみたい人にはかなり合うと思います。
まとめ
『陰の実力者になりたくて!』6巻は、王都の猟奇事件を舞台にシドが暗躍する、ホラー風味の強い巻でした。不穏な空気との相性は抜群で、相手が格を理解して引くような、強さの見せ方にこだわったバトルも楽しめます。物語が大きく前進する巻ではないため、展開の進行を最優先する人には物足りなさもありますが、その巻ごとの雰囲気や場面を味わいたい方にはおすすめの一冊です。
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