『剣と魔法と学歴社会 5 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~』(5巻)感想・レビュー
林間学校という名の軍事訓練が一番の見どころ

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★★★★★★★★★★4.5 / 5
『剣と魔法と学歴社会 5 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~』(5巻)西浦真魚(著)/まろ(イラスト)/KADOKAWA・カドカワBOOKS の書影

楽しみにしていた行事が、蓋を開けてみたら訓練だった。それでも読んでいる側のワクワクは最後まで途切れませんでした。『剣と魔法と学歴社会 5 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~』(5巻)は、西浦真魚さんによるカドカワBOOKSの異世界転生ファンタジー(イラスト:まろさん/2025年刊行)後期最大の行事として待ち構えていた林間学校が、物資の運搬から城塞づくり、軍勢を相手取る防衛戦まで、まるごと演習として描かれる巻です。クラス総出で難題に挑む構成が一冊を通して続き、シリーズの中でも屈指の熱量を持った一冊になっています。

総合評価 ★4.5|林間学校という名の軍事訓練を一冊まるごと描き切る、シリーズ随一の熱量。班ごとの見せ場が次々に用意されていて、作戦もの・演習もののワクワク感を味わいたい人におすすめです。

目次

『剣と魔法と学歴社会』はどんな作品?

『剣と魔法と学歴社会』は、出身校で人生が決まる学歴至上の貴族社会を舞台にした異世界転生ファンタジーです。前世で受験や資格試験に明け暮れたガリ勉社会人の記憶を持つ田舎貴族の三男・アレンが、今世こそ自由に生きようと最難関のエリート校へ入学し、探索者や騎士団員としても活動の幅を広げてきました。5巻の舞台は、後期最大の青春行事として心待ちにしていた林間学校です。ところが現地で待っていたのは、教官役のゴドルフェンが課してくる軍事訓練さながらの連続ミッションでした。大量の物資を山頂まで運び上げ、城塞を築き、軍隊を相手に持ちこたえる。無理難題を突きつけられたアレンは、クラスメイトそれぞれの知識や技能を総動員し、教官たちの想像を超える結果で鼻を明かそうと動き出します。

発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、剣と魔法と学歴社会 5 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~からどうぞ。

向いている人

作戦もの・演習もののワクワク感が好きな人

与えられた条件をどう攻略するかを考え、限られた戦力をやりくりして課題をこなしていく展開が一冊を通して続きます。作戦を組み立てる過程そのものを楽しめる人にはたまらない巻です。

クラス総力戦の見せ場を求める人

難易度の高い課題に、クラスが班に分かれて挑んでいく構成が取られています。主人公ひとりの独壇場ではなく、それぞれの持ち場に見せ場が用意されているのが気持ちよく読めるところです。

シリーズを追っていて、盛り上がる巻を待っていた人

これまでの巻で積み上げてきた設定や人間関係が、林間学校という一つの舞台にまとめて注ぎ込まれます。シリーズを順番に読んできた人ほど手応えを感じられる構成です。

前世の知識を生かした工夫が好きな人

力押しではなく、知識と発想で課題を切り崩していくのがこの主人公の持ち味です。今回はその工夫が課題攻略に直結するため、理屈で押し切る面白さが分かりやすく味わえます。

合わないかもしれない人

林間学校らしい青春や息抜きを期待する人

行事の名前こそ林間学校ですが、中身はほぼ演習です。友人たちとのんびり過ごす学校行事の空気を楽しみにしていると、想像していたものとは違う一冊に感じられるかもしれません。

対抗戦の全体像まで見届けたい人

クラス対抗の形式は取られているものの、課題はクラスごとに異なり、獲得ポイントの合計で競う形になっています。他クラスがどう戦っていたのかまでは踏み込まれないため、勝負全体を俯瞰したい人には物足りなさが残るかもしれません。

落ち着いた日常やラブコメを主に読みたい人

一冊の大半が課題への対応に割かれるため、穏やかな学園生活の比重は小さめです。日常描写や恋愛面の進展を主目的に読むと、出番が少ないと感じられるかもしれません。

感想・見どころ

※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。

5巻は林間学校が丸ごと一冊の主題になっていて、これがとにかく面白かったです。名前は林間学校でも中身はほぼ軍事演習なのですが、次はどんな課題が来るのか、それをどう攻略するのかという期待が最後まで続き、読んでいてワクワクが止まりませんでした。シリーズを通して、今のところ一番面白い巻だと思っています。

その面白さを支えているのが、クラスを班に分けて課題に当たらせる構成です。全員が同じ場所で同じことをするのではなく、それぞれの持ち場で別々の状況に向き合うため、見せ場が分散して用意されます。主人公の側だけを追っていても、別の班が今どうしているのかが気になってページをめくる手が進みました。

その流れの中で、課題の設計そのものも読みどころになっています。物資を運び、拠点を築き、押し寄せる相手を防ぐという課題は、力任せに突破できるものではありません。限られた人手と時間をどこに割り振るかという判断が問われるので、戦闘そのものよりも段取りの部分に面白さが宿っていました。前世の知識を持つ主人公が、その段取りを引っくり返す発想を出してくるのもこのシリーズらしいところです。

一方で、少し惜しいと感じたのは対抗戦としての見せ方でした。クラス対抗という形式は取られているのですが、課題はクラスごとに異なり、それぞれの獲得ポイントの合計で競う仕組みになっています。そのため他のクラスがどんな状況で、どこまで食い下がっていたのかまでは描かれません。競い合いとしての緊張感をもう一段味わいたかった、という気持ちは残りました。

それでも、演習が積み上がっていく先に用意された終盤の展開は、この巻の集大成と呼ぶにふさわしい仕上がりでした。詳しくは触れませんが、主人公が持てるものを出し切る場面には気持ちよさがあります。合間に挟まる閑話ではシリーズらしいギャグも健在で、張り詰めた空気が続きすぎないバランスも取られていました。次の巻へつながりそうな気配もいくつか残されていて、続きが気になる形で閉じてくれるのも良かったです。

まとめ

『剣と魔法と学歴社会』(5巻)は、林間学校という名の軍事訓練を一冊まるごと描き切った巻でした。班ごとに分かれて課題へ挑む構成のおかげで見せ場が途切れず、段取りと発想で難題を崩していく面白さが最後まで続きます。他クラスの状況まで描かれない点に物足りなさは残るものの、演習ものの熱量を求める人には強くおすすめできる一冊です。シリーズを追ってきた人ほど、ここまでの積み重ねが効いていると感じられるはずです。

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