向いている人
勘違い・すれ違いで話が転がるコメディが好きな人
才能がないはずの主人公への期待が、幼馴染たちの活躍でどんどん膨らんでいきます。本人の自己評価と周囲の評価がズレたまま話が進む面白さを楽しめる人に向いています。
寄せ集めのパーティが噛み合っていく過程を読みたい人
この巻では、互いに面識のないハンターたちが成り行きで同じ依頼に就きます。息が合わないところから始まった一団が、危険の中で少しずつ連携を覚えていく流れが気持ちよく読めます。
キャラの深掘りと凝った世界設定を味わいたい人
アニメではあまり描かれない脇役にも、原作ではしっかりとした背景と物語が用意されています。宝物殿や宝具といった世界の仕組みに関する説明も丁寧で、設定そのものを読む楽しさがあります。
アニメから入って原作も気になっている人
原作では主人公の内心がアニメより細かく描かれており、アニメのコメディ調をさらに掘り下げて楽しめます。巻末には本編とは温度感の違う外伝も収録されています。
合わないかもしれない人
テンポ重視でアニメだけで満足したい人
アニメのノリが良いぶん、コメディとして楽しむだけならアニメだけでも十分という面もあります。原作ならではの掘り下げに魅力を感じない場合は、物足りないかもしれません。
主人公自身の派手な能力・無双を期待する人
主人公クライには現時点で特殊な力は描かれず、強いのはあくまで幼馴染たちです。主人公が自ら無双する展開を求めると、方向性が違うと感じるかもしれません。
幼馴染ヒロイン中心の話を早く読みたい人
1巻は幼馴染周りよりも、それ以外のキャラの登場が多めです。幼馴染関係の進展を最優先で求めると、本巻ではやや待たされます。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
アニメ化をきっかけに本作を知り、1〜2話を見てから原作を手に取りました。アニメのコメディ調が原作ではどう描かれるのか気になっていましたが、結論から言うと、原作もしっかり楽しんで読めました。
特に良かったのは、それぞれのキャラクターの深掘りです。アニメ第1話に登場するギルベルトも、アニメではあまり掘り下げられませんが、原作ではそれなりの物語が用意されていて、脇役にも厚みを感じます。主人公クライの内心もアニメより細かく描かれているので、アニメで興味を持った人が原作を読む価値は十分にあると思います(アニメのノリが良いので、コメディとして楽しむだけならアニメだけでも十分かもしれませんが)。
その厚みは、主人公から離れた場面でも効いています。クライ本人は自分を完全なお荷物だと思っているのに、周囲は誰ひとりそう見ていない。幼馴染や後輩だけでなく、立場も利害も違う大人たちまでが彼を高く買っているという描き方が、本人の視点の外側からきちんと積み上げられていきます。この温度差そのものが、本作のコメディを回している装置なのだと分かる作りでした。
そのうえで面白かったのが、主人公クライの「強さ」の正体です。何か特殊な力があるのかと思って読み進めましたが、現時点では特に描かれていません。強いて言えば、大量の宝具を使いこなしているのが特技でしょうか。作中では宝具の扱いは難しいとされているので、それを大量に操れること自体が、実は才能なのかもしれない——と思いながら読んでいました(はっきり言及はされていませんが)。
設定周りの説明が読んでいて楽しいのも好印象でした。宝物殿や宝具まわりの作り込みが凝っていて、面白い要素が多く感じられます。
この設定の面白さが、探索パートの読み応えにもつながっています。この巻で組まれるのは、互いに面識のないまま押し込まれたような一団です。当然のように最初は噛み合わないのですが、危険な状況を重ねるうちに、それぞれの役割が自然と埋まっていく。寄せ集めが少しずつパーティらしくなっていく過程は、読んでいて素直に気持ちよかったところです。
一方で、主人公の身の振り方は最後まで一貫して調子が良いままです。動機の中身はさておき、危ないと分かっている場所へ自分から出ていく判断だけは偉いと思ったのですが、そこから先の立ち回りが相変わらず行き当たりばったりで、そこがまた本作らしい可笑しさになっていました。
全体的に、1巻は幼馴染周りよりもそれ以外のキャラの登場が多めです。そのぶん、次巻以降で幼馴染関係の物語が進んでいくのを期待したくなる引きにもなっていました。巻末には日常寄りの外伝も収められていて、張り詰めた本編のあとにほのぼのした後味が残るのも良かったです。
まとめ
『嘆きの亡霊は引退したい』1巻は、才能のない主人公クライへの期待だけが膨らんでいく勘違いコメディに、脇役まで行き渡ったキャラの深掘りと凝った世界設定が乗った一冊です。そこへ、寄せ集めのパーティが探索の中で噛み合っていく過程が加わり、コメディ一辺倒では終わらない読み応えになっていました。
主人公自身の無双を求めると方向性が違いますが、本人の自己評価と周囲の評価がどこまでもズレていく面白さを味わいたい人にはよく刺さるはずです。次巻を待たせる引きも用意されていて、アニメで知った人が原作の面白さを確かめるのにちょうどいい第1巻でした。
🔒 ネタバレあらすじを開く(クリックで表示)
1巻は、自分に才能がないと分かっているクライが、探索者協会から押しつけられた「罰ゲーム」の依頼を、その場に居合わせた若手たちへ丸ごと振ってしまうところから動き出します。彼にとっては一番簡単そうに見えた一件でしたが、振られた側にとっては、経験も足りなければ割にも合わない仕事でした。
寄せ集めの一団が向かった先は、事前の資料とはまるで様子が違っていました。現れるものの姿も強さも聞いていた話と食い違い、引き返すべきだという声も出ます。それでも先へ進む判断が下され、面識のなかった四人が危険の中で少しずつ連携を組み上げていく過程が、この巻の本筋になります。
送り出した側も遅れて異変に気づき、自ら現地へ向かいます。動機はどこまでも個人的なものですが、戦う力を持たない人間が何を切り札にできるのかという形で立ち回りが描かれ、その手札が尽きるところまで含めて見せられます。
追い詰められた場面をひっくり返すのは、その場にいた誰でもありません。桁の違う実力者が割り込んだ瞬間に戦いの意味そのものが変わってしまい、直後には身内へ向けた容赦のないやり取りが始まります。強さの格差が何を意味するのかは、戦闘そのものよりこの数ページで伝わってきました。
騒動のあと、打ちのめされた若手は自分の立ち位置を測り直し、手にしていたものを預けて出直す道を選びます。クライのほうも引退を口にしますが、その願いがどう扱われるかは読んでのお楽しみです。巻末では本編から離れた場所で不穏な何かが動き出し、続きが気になる形で次巻へ渡されます。
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