運命的な出会い――のはずが、相手はクラスでまるで印象に残らない地味な女の子だった。『冴えない彼女の育てかた』(1巻)は、丸戸史明さんによる富士見ファンタジア文庫のラブコメ(イラスト:深崎暮人さん/2012年刊行)。オタク高校生の主人公が、その冴えないヒロインを自分の作品のメインヒロインへと育て上げようと動き出します。華やかな美少女が最初から揃っているのではなく、冴えない存在を本気で主役にしようとする――その斬新な発想が、王道ラブコメに新鮮な角度を与えている一冊です。
総合評価 ★4.5|印象に残らない地味なヒロインを本気で主役に育てるという発想が光る、オタク文化全開の青春ラブコメ。王道の魅力に新鮮な切り口を重ねた、ラブコメ好きなら一度は触れておきたい一冊です。
『冴えない彼女の育てかた』はどんな作品?
『冴えない彼女の育てかた』は、桜舞う坂道での運命的な出会いから始まる青春ラブコメです。けれど主人公・安芸倫也が出会ったその少女は、後日よく見るとクラスでまったく印象に残らない地味な同級生でした。自分の作りたい作品のことで頭がいっぱいの倫也は、それでも彼女こそメインヒロインにふさわしいと考え、冴えない彼女をヒロインへと育て上げることを決意します。人気絵師の幼なじみや毒舌な天才シナリオライターの先輩といった個性的な面々も巻き込みながら、創作とそれぞれの距離が動いていく、ヒロインを育成するという斬新な切り口の物語です。
発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、冴えない彼女の育てかたからどうぞ。向いている人
王道ラブコメが好きな人
本作はラブコメとしての王道の魅力をしっかり押さえています。ヒロインたちとの距離の変化や軽快な掛け合いを楽しみたい人に、安心しておすすめできる作品です。
創作・オタク文化をネタにした作品が好きな人
同人ゲーム制作を軸に、オタク文化のあれこれが全開で盛り込まれています。創作の現場やサブカルのノリが好きな人ほど、ニヤリとできる場面が多いはずです。
「冴えない」を肯定する物語に惹かれる人
地味で目立たないヒロインを本気で主役に据えるという発想が、この作品の核です。冴えない存在に光を当てていく物語に惹かれる人には、タイトルからして刺さります。
合わないかもしれない人
ラブコメ自体が苦手な人
物語の中心は、あくまで恋愛模様と人間関係の変化です。ラブコメというジャンルそのものが得意でない人には、合わない可能性があります。
メタ的・オタク的なノリが合わない人
作中にはオタク文化やメタ的な小ネタが多く盛り込まれています。そうした内輪向けのノリが苦手だと、テンポに乗りづらく感じるかもしれません。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
『冴えない彼女の育てかた』を最初に手に取ったのは、当時、著者買いがきっかけでした。あらためて振り返ってみると、やはりこの作品の面白さの核は、冴えないヒロインを本気で主役に据えようとする発想そのものにあったのだと感じます。
華やかなヒロインが最初から用意されているのではなく、印象に残らない地味な女の子を、主人公が自分の手でメインヒロインへと育てていく。このヒロインを育成するという切り口が、王道のラブコメに新鮮な角度を与えていて、タイトルからして強く惹きつけられます。
正直なところ、細かい展開はうろ覚えになってしまった部分もあります。それでも自分の好みにぴったりだったという感覚だけは、今でもはっきりと残っていて、あらためて読み直したくなりました。オタク文化を全開で取り込んだノリや、作中で動いていく人間関係も含め、ラブコメ好きなら一度は触れておきたい一冊だと思います。
まとめ
『冴えない彼女の育てかた』(1巻)は、印象に残らない地味なヒロインを主人公が本気でメインヒロインへと育てていく、ヒロイン育成という切り口が光るラブコメでした。王道の魅力を押さえつつ、オタク文化全開のノリと冴えないを肯定する発想で、ありそうでなかった角度を見せてくれます。ラブコメやサブカルのノリが好きな人には特におすすめで、メタ的な小ネタが苦手な人とは好みが分かれるかもしれません。読み終えてからも自分好みだったという感覚が残る、また手に取りたくなる一冊です。