強敵を求めて武者修行に明け暮れる侍が、神仏に祈った末に迷い込んだのは異世界だった――。『サムライ転移~お侍さんは異世界でもあんまり変わらない~1』(1巻)は、四辻いそらさんによるMFブックスの異世界ファンタジー(イラスト:天野英さん/2023年刊行)。主人公・黒須の面白さは、異世界に来てなお「外国に迷い込んだ」くらいの感覚で動じないところにあります。魔物も魔法もダンジョンも、未知の手応えを楽しむ修行相手として受け止めていく、武士道一直線の血気盛んな冒険譚です。
総合評価 ★5.0|異世界転移もののお約束をあえて踏み外す侍のズレと、強敵に真っ向勝負を挑む武者修行テンションが癖になる開幕巻。テンポよく異世界を斬り進む爽快さを味わいたい人におすすめです。
『サムライ転移~お侍さんは異世界でもあんまり変わらない~1』はどんな作品?
武者修行に明け暮れる侍・黒須は、本気で打ち合える強敵がどこにも見当たらず退屈していました。「見たことも聞いたこともない難敵と巡り合わせてほしい」と、さして信じてもいない神仏に祈るほどです。するといつの間にか、黒須は見知らぬ異世界へ迷い込んでいました。とはいえ当人は大して動じることなく、魔物・魔法・ダンジョンといった未知の存在に心を躍らせ、自分の武芸をぶつけていきます。武士道を曲げないまま異世界を斬り進む、血気盛んなサムライの冒険が幕を開ける第1巻です。
発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、サムライ転移~お侍さんは異世界でもあんまり変わらない~1からどうぞ。向いている人
「異世界に来たのに本人は外国気分」というズレを楽しめる人
この作品のいちばんの個性は、主人公が「異世界に転移した」と大騒ぎしないところです。黒須はどこか「遠い外国に来ただけ」くらいの感覚で振る舞い、その落ち着きとズレが独特の可笑しさを生んでいます。テンプレな転移ものに少し食傷気味の人ほど、この距離感が新鮮に映るはずです。
武者修行・強敵探しに前のめりな主人公が好きな人
黒須は戦える相手を求めて自分から前に出ていくタイプで、未知の魔物や魔法に対してもワクワクしながら挑んでいきます。その血気盛んなテンションにテンポが合うと、ページをめくる手が止まらなくなります。強さを誇示するより、強敵との立ち合いそのものを楽しむ姿勢が小気味よいです。
異文化に触れる侍の反応を眺めるのが楽しい人
物語の面白さの軸になっているのが、侍の視点から見た未知への解釈です。魔物やダンジョンを黒須がどう受け止め、どう斬りかかっていくのか。そのひとつひとつの異文化反応が、この巻ならではの味わいになっています。
序盤の第一印象が変わっていくタイプの作品を許せる人
黒須の言動は序盤こそ人を選ぶかもしれませんが、読み進めるうちに「このキャラ、案外いいぞ」と評価が変わっていく作りになっています。最初のとっつきにくささえ込みで楽しめる人には、後半の手応えがしっかり待っています。
合わないかもしれない人
転移直後から状況を把握して手堅く進む主人公が好みの人
黒須は「ここは異世界だ」と冷静に分析するより、「外国だな」くらいの感覚で勢いよく動いていきます。設定をきっちり整理しながら慎重に進むタイプの主人公を期待すると、その奔放さが気になるかもしれません。
主人公の血気盛んなテンションが得意でない人
とにかく強敵を求めて前に出る性分なので、静かな内省やのんびりしたスローライフを求めて読むと方向性がずれます。勢いとテンションで引っ張る物語が苦手な人には、合わない可能性があります。
冒頭の数ページで作品の好みを決めてしまいがちな人
この巻は後半にかけて評価が上がっていくタイプなので、序盤の印象だけで判断すると持ち直す前に離れてしまうかもしれません。少し腰を据えて読める人のほうが、面白さに届きやすい作品です。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
読み始めてまず引き込まれたのは、主人公・黒須の「異世界に来てもまるで動じない」立ち姿でした。普通なら戸惑う場面でも、彼は「外国に迷い込んだ」くらいの感覚で淡々と構えます。その独特のズレが、よくある転移もののテンプレをするりとかわしていて、最初のページから新鮮でした。
そのうえで気持ちいいのが、未知の魔物・魔法・ダンジョンに対する黒須の前のめりな反応です。強敵を探して武者修行を続けてきた彼にとって、異世界はむしろ望むところ。怖がるどころか心を躍らせて斬りかかっていく姿には、武者修行テンションならではの爽快感があります。
正直、黒須の血気盛んな言動は序盤こそ人を選ぶかもしれません。それでも読み進めるほどに「この侍、案外クセになるな」と引き込まれていく、最初のとっつきにくささえ魅力に変えてくる開幕巻でした。シリーズの入口として、続きが気になる手応えがしっかり残ります。
まとめ
『サムライ転移~お侍さんは異世界でもあんまり変わらない~1』(1巻)は、異世界転移もののお約束をあえて踏み外す侍のズレと、強敵に真っ向勝負を挑む武者修行テンションが癖になる開幕巻でした。未知を恐れず楽しむ黒須のキャラクターが何より魅力で、テンポよく異世界を斬り進む爽快さが光ります。落ち着いた分析型の主人公より、勢いとテンションで引っ張る物語が好きな人にこそおすすめ。序盤のクセを越えた先に、続きを追いたくなる手応えが待っている一冊です。
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