逢沢大介先生『陰の実力者になりたくて!』の第7巻は、2026年4月にKADOKAWAから刊行された新文芸シリーズの一冊です。本巻の舞台は、アルファの故郷であるエルフの国。王位継承戦という体裁を取りながら、実際には王位をめぐる思惑や三大派閥の駆け引きが前面に出ます。しかも今回のシドは、いつもの組織とは別の立場で、弟子を取る師匠ポジションとして関わる――その新鮮さが本巻の読みどころです。
総合評価 ★4.0|師匠ポジションで動くシドという新鮮さと、エルフの国の王位継承戦をめぐる駆け引きが楽しめる巻。次巻へ流れを整えるつなぎ寄りですが、引きが強くシリーズを追う人ほど楽しめます。
『陰の実力者になりたくて! 07』はどんな作品?
『陰の実力者になりたくて! 07』は、アルファの故郷であるエルフの国を舞台に、次代の王を決める王位継承戦をめぐって各勢力が一斉に動き出していく巻です。
表向きはバトルロイヤルものの体裁ですが、実際には王位をめぐる思惑、三大派閥の動き、そして背後にある教団の影が絡み合い、エルフの国を舞台にした勢力争いの面白さがしっかり前に出る構成になっていました。その流れの中で、シドはいつも通り自分の理想を優先して動きます。しかも今回は『シャドウガーデン』とは別の立場で王位継承戦に関わるため、同じ事件を扱いながらも、いつもとは少し違う角度からシドの面白さが見える巻でした。
発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、陰の実力者になりたくて! 07からどうぞ。向いている人
エルフの国の王位継承戦や勢力争いの駆け引きを楽しみたい人
今回は単純なバトルロイヤルというより、エルフの国の王位をめぐる思惑や派閥の動きが軸になっています。ただ戦うだけではない、裏側の駆け引きを楽しめる人にはかなり合いやすい巻です。
いつもとは少し違う立ち位置で動くシドを見たい人
今回はいつもの組織側ではなく、別ルートから王位継承戦に関わる形になっています。同じ世界観の中でも違う角度から主人公の動きを楽しめる、本作らしい面白さが出ていました。
師匠ポジションの主人公が好きな人
弟子入りを志願してきた少女との関係が、この巻ならではの見どころでした。これまでとは違う立ち位置のシドが見られる新鮮さがあり、その要素がかなり効いています。
バトルだけでなく裏側の思惑や次巻への引きも含めて楽しみたい人
戦いの場面はしっかり用意されていますが、戦闘だけで進むわけではありません。王位継承戦の裏側や各陣営の動きまで含めて楽しめる人に向いた構成でした。
続きが気になる終わり方の巻も楽しめる人
7巻はこの一冊で完結するというより、次巻へつながる形で締めくくられます。シリーズの流れを追いながら、次への期待を含めて楽しめる人とは相性のいい巻でした。
合わないかもしれない人
主人公の陰の実力者らしい立ち回り自体が苦手な人
ここは7巻でも変わりません。作品の面白さの中心がシドの独特なこだわりにあるので、そこが合わないとどうしても楽しみにくいと思います。
バトルロイヤルなら戦闘量を最優先で楽しみたい人
形式はバトルロイヤルものですが、実際にはエルフの国の王位継承をめぐる話の比重が大きい巻です。戦いそのものを中心に味わいたい人には、少し印象が違うかもしれません。
一巻ごとにきれいに完結してほしい人
今回は次巻へ続く形で終わるので、読後の区切りはやや弱めです。その巻だけでしっかり完結してほしい人には少し引っかかる可能性があります。
主人公が組織全体を動かす展開を強く求める人
今回は『シャドウガーデン』の動きもありますが、シドは別の流れで動く部分が目立ちます。組織全体の一体感より、主人公単独の動きを味わう巻という印象が強めでした。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
『陰の実力者になりたくて! 07』の見どころは、やはりエルフの国の王位継承戦をめぐる駆け引きと、その中で展開される師匠ポジションで動くシドの陰の実力者らしい立ち回りでした。
まず印象に残ったのは今回の構成です。表向きはバトルロイヤルものなのですが、読んでみると戦闘そのものを延々と見せるわけではなく、王位継承をめぐる駆け引きや各勢力の動きに重心が置かれていました。そのため、ただの大会ものとは違う、裏側の流れを追う面白さが強く出ていたと思います。
この巻の良さは、そうした勢力争いの中にシドがいつも通り自分の理想を持ち込んでくるところでした。しかも今回は『シャドウガーデン』とは別の形で関わるので、同じ事件の中でもまた違った角度から主人公の魅力が見られます。組織の動きとは少しズレた場所で、自分だけの美学を優先して動くシドが相変わらず楽しいです。
特に良かったのは、弟子入りを志願してきた少女との関係でした。これまでも師匠らしい立場に立つ場面はありましたが、ここまで前面に出して弟子を取る立場を楽しめる形はシリーズの中でもそう多くなかった印象で、そのぶん新鮮さがあり、かなり面白く読めました。弟子側の少女もただついてくるだけでなく、ちゃんと印象に残るキャラとして描かれていて、次巻でどう絡んでいくのかも気になります。
バトル面についてもしっかり見どころはありました。ただ、今回は戦闘そのものがすべてというより、エルフの国の王位継承戦という枠組みの中で誰がどう動くかを含めて楽しむ巻だったと思います。純粋なバトル量だけで見ると物足りなさを感じる人もいるかもしれませんが、自分としてはこのバランスがちょうどよかったです。シドの陰の実力者らしい立ち回りも、いつもの大げささやこだわりに師匠という新しい立ち位置が加わったことで、これまでとは少し違う面白さが出ていました。
ストーリー全体としては、7巻はここで大きく決着するというより、次巻へ向けて流れを整える巻という印象でした。ただ、続きが気になる終わり方としてはかなりうまく機能していて、シリーズものとして読むと素直に次が楽しみになります。エルフの国の王位継承戦をめぐる暗躍の面白さと、師匠ポジションで動くシドの新鮮さが印象に残る、シリーズを追っている人ほど楽しみやすい一冊でした。
まとめ
『陰の実力者になりたくて!』7巻は、エルフの国の王位継承戦をめぐる駆け引きと、師匠ポジションで動くシドの新鮮さが印象に残る一冊でした。戦闘量よりも裏側の思惑や勢力争いに比重があり、弟子入りした少女との関係も含めて新しい味わいがあります。一冊で完結する区切りを求める人にはつなぎ的に感じられますが、シリーズを追ってきた方には次巻への期待が高まる、楽しみな一冊です。
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