『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 2』(2巻)感想・ネタバレ解説
新人ライバーが増えて騒がしさが増す配信の日々

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★★★★★★★★★★3.5 / 5
『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 2』(2巻)江波界司(著)/みず(artumph)(イラスト)/一二三書房・ブレイブ文庫 の書影

面子がひとり増えるだけで、配信の空気はここまで変わるのかと思わされる巻でした。江波界司さんによるブレイブ文庫のVTuberコメディ(イラスト:みず(artumph)さん/2025年刊行)のシリーズ第2巻。「兄者」として扱われる日々が定着したところへ新人ライバーが加わり、コラボの組み合わせが一気に増えます。1巻の賑やかさをそのまま押し広げたような読み味でした。

総合評価 ★3.5|新人ライバーの加入で顔ぶれが増え、コラボの組み合わせが広がった第2巻です。気心の知れた面々の掛け合いとコメント欄の悪ノリが引き続き読みどころで、1話ごとに区切って読める気軽さも変わりません。ただし物語が大きく動くタイプではないので、筋の展開を求めると物足りなく感じます。

目次

『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 2』はどんな作品?

配信事故をきっかけに「兄者」と呼ばれるようになった兄が、妹のVTuber活動へ引きずり込まれてから数ヶ月。立ち絵まで用意され、公式の非公式ライバーという扱いがすっかり定着したところへ、新たにデビューしたライバーが顔を出します。妹をはじめ、オタク、酒豪、魔王と呼ばれる面々に一人加わったことで、コラボの組み合わせはさらに増えていきます。ゲームで遊ぶ回、晩酌をしながら話す回、身内へドッキリを仕掛ける回と、趣向を変えながら兄妹の日常が続いていくコメディです。

発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 2からどうぞ。

向いている人

1巻の賑やかさをそのまま続けて味わいたい人

語り口も読み味も1巻から地続きで、路線が変わったところはほとんどありません。前巻の空気が気に入った人なら、そのままの温度で続きを楽しめます。

キャラ同士の組み合わせが増えるのを楽しみたい人

顔ぶれが一人増えたことで、誰と誰が並ぶかのパターンが目に見えて広がります。既存メンバー同士の関係にも新しい角度から光が当たるので、掛け合い目当ての人ほど得をします。

企画ものの配信回が好きな人

お題を決めて話す回、勝敗のはっきりするゲーム回、罰ゲーム付きの回と、枠組みを変えながら配信が続きます。同じ面子が集まっても絵面が単調にならないのは、この作りのおかげです。

すき間時間に少しずつ読みたい人

1話が短く、その場で始まってその場で片づく構成は今回も健在です。まとまった時間が取れなくても読み進めやすく、区切りのいいところで気持ちよく止められます。

合わないかもしれない人

筋の通った大きな物語を求める人

巻をまたいで積み上がる縦の筋はほとんどありません。日常が続いていくこと自体を楽しむ作品なので、大きな目標へ向かって進む話を期待すると肩透かしになります。

登場人物が増えるほど関係を追うのが負担な人

1巻の面々に加えて新しい名前が並ぶため、誰が誰をどう呼ぶかを覚える手間は増えます。人数の多い群像的な賑やかさが苦手なら、少し疲れるかもしれません。

配信文化のノリが前提の作品が苦手な人

ネットの内輪ノリや小ネタが笑いの中心に置かれている点も1巻と同じです。その空気に馴染みがないと、賑やかさだけが上滑りして感じられる可能性があります。

感想・見どころ

※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。

今回いちばん効いていたのは、いつもの顔ぶれに新人が加わったことでした。既存の面々だけで回していた場に一人入るだけで、誰が誰を弄るかの流れが変わり、掛け合いの組み合わせが目に見えて増えます。1巻の面子が気に入っていた人ほど、その広がり方を素直に楽しめるはずです。

しかもその新人が、初対面の印象と後から見えてくる顔がずいぶん違うタイプで、周りが振り回される場面が繰り返し描かれます。兄者が相手をどう扱えばいいのか測りかねている様子を追っていると、読んでいるこちらも同じ速度で認識を改めることになるので、掴みとしてよくできていました。

この流れの中で、企画ものの配信回が厚くなっているのも本巻の特徴です。話題を決めて喋る形式、勝ち負けのはっきりするゲーム、罰ゲームを賭けた勝負と、回ごとに枠組みを変えてくるので、同じ面子が集まっても絵面が単調になりません。ある回で決まった罰ゲームがそのまま次の話へ持ち越されることもあり、短編の連なりでありながら地続きに読めるのは気持ちのいいところでした。

一方で、賑やかな回ばかりというわけでもありません。二人だけで落ち着いて話す回では、普段は茶化される側の内面へ少しだけ踏み込みます。全体の温度が軽いぶん、そういう回に出くわしたときの落差が印象に残りました。

そのうえで、読み味そのものは1巻から大きく変わりません。1話ごとに始まって片づく構成は健在で、物語が大きく動いていくタイプでもないので、筋の起伏を期待して読むと物足りなさが残ります。裏を返せば、区切りのいいところで気持ちよく止められる気軽さは相変わらずで、疲れているときでも構えずに手を伸ばせる一冊でした。

まとめ

2巻は、定着した「兄者」の立ち位置はそのままに、新人ライバーが一人加わることで場の組み合わせを広げてみせた巻でした。中でも、初対面の印象があてにならない新人に周囲が振り回されていく流れと、枠組みを変えながら続く企画配信の回転の良さが魅力です。配信のノリが好きな人、1巻の空気をそのまま続けて味わいたい人に向いています。物語として大きく動く巻ではありませんが、顔ぶれが増えた先をもう少し眺めていたくなる読後感でした。

🔒 ネタバレあらすじを開く(クリックで表示)

この巻の起点は、事務所に新人ライバーの甘鳥椿が加わったことです。初コラボの時点では受け答えの整った常識人に見えるのですが、話を掘っていくうちに印象がひっくり返り、兄者は早々に警戒する側へ回ります。以降、彼女が絡む回はたいてい誰かが振り回される形で進みます。

そこから先は、事務所のメンバーが入れ替わりで集まる企画配信が並びます。禁止ワードを避けながら喋る回、勝敗のはっきりするゲーム回、兄者本人を題材にしたクイズ回などがあり、負けた側には罰ゲームが割り当てられます。この罰ゲームがその回で終わらず、別の話の火種として持ち越されることもありました。

賑やかな回の合間には、二人だけで向き合う晩酌配信も置かれています。ここでは相手が配信を始めた理由が語られ、兄者がそれを受け止める形になります。

活動一周年の節目には、凸待ち形式の配信が用意されます。メンバーが順番に電話をかけてきて、用意されたお題に答えていくのですが、答えの端々にそれぞれの距離感が出るのが面白いところでした。

年末年始から春にかけては、配信の外での集まりや季節の行事に沿った回が続きます。全員での鍋、旅行、学業まわりの騒動、バレンタインとホワイトデーの応酬、エイプリルフールに合わせた企画と、画面に映らない時間のほうが賑やかな回も少なくありません。

終盤は八重咲紅葉に焦点が当たります。ちょっとした言い合いをきっかけに場が設けられ、そこで彼女の過去が語られ、兄者は助言を残して話が閉じます。

読み終えて印象に残ったのは、新人がひとり増えただけで場の力学がここまで変わるのか、という点でした。デビュー自体は複数いたようなのに本編へ出てくるのは一人だけなので、残りの面々が今後どこかで顔を出すのかどうかも気になっています。

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