『日本国召喚 三 滅びゆく栄光・下』(3巻)感想・レビュー
アルタラス解放から皇国本土への反撃が始まる

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★★★★★★★★★★4.0 / 5
『日本国召喚 三 滅びゆく栄光・下』(3巻)みのろう(著)/toi8(イラスト)/KADOKAWA・カドカワBOOKS の書影

守るための戦いを続けてきた日本が、ついに相手の懐へ踏み込みます。『日本国召喚 三 滅びゆく栄光・下』(3巻)は、2巻で決定的になった列強パーパルディア皇国との対立が、本格的な戦争として動き出す一冊です。

みのろうによる国家転移ファンタジーのシリーズ第3巻で、イラストはtoi8、兵器などの口絵・本文イラストは深井涼介。2017年にぽにきゃんBOOKSから刊行された作品を、2026年にカドカワBOOKSが再発行したものです。

「上」で積み上がった緊張が一気に解き放たれ、皇国の現場、皇国の中枢、周辺の国々と、視点を切り替えながら戦況が転がっていきます。列強として当たり前だった前提が崩れていく過程を、いろいろな立場から見届けられるのが読みどころでした。

総合評価 ★4.0|日本の反撃が本格化し、皇国との戦いが大きく動く第3巻。各国の視点から戦争の行方を追う読み応えと、広がり続ける世界の気配が魅力です。

目次

『日本国召喚』はどんな作品?

『日本国召喚』は、ある日突然、日本が国ごと異世界へ呼び出されてしまう物語です。3巻の舞台の一つは、戦いに敗れてパーパルディア皇国の領土にされたアルタラス島。皇国の支配のもとで理不尽が日常になっていた島に、転機が訪れます。

皇国から宣戦布告を受けた日本は、日本へ攻め込んでくるおそれのある部隊として、島に駐留する皇国軍に狙いを定めます。これを好機と見た元アルタラス王国軍の兵たちは立ち上がり、国を取り戻すことに成功します。さらに日本が皇国の力を削ぐため皇都への攻撃に踏み切る一方で、島の独立を許した皇国もまた、海軍の大艦隊を動かし始めます。

なお、このカドカワBOOKS版はぽにきゃんBOOKS版の再発行で、小説の中身は変わっていません。変更点は書影と本扉のデザイン、口絵の文字サイズ、あとがきのみなので、旧版をお持ちの方は重複購入に気をつけてください。

発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、日本国召喚 三 滅びゆく栄光・下からどうぞ。

向いている人

日本の反撃がどこまで及ぶのかを見届けたい人

2巻では皇国の非道に怒りを溜めながら読み進めることになりましたが、3巻ではその日本がはっきりと反撃に出ます。占領された島の解放から皇国本土への攻撃まで、戦いの舞台が段階を踏んで広がっていくので、前巻のもやもやを抱えていた人ほど読み応えを感じるはずです。

戦争を国ごと・立場ごとの視点で追いたい人

今巻は日本側だけでなく、皇国の竜騎士や艦長、皇国の上層部、周辺国の王や外交官など、実に多くの視点で戦況が語られます。前線の異常な報告が上に届かなかったり、届いても信じてもらえなかったりする様子は「あるある」と思わず頷いてしまうほどで、追い詰められていく側の組織の空気まで伝わってきました。

戦記の外側に広がる世界の謎にも惹かれる人

戦争の合間には、技術の差を肌で感じる機械文明の国ムーの人々や、竜人族の国で行われる占いなど、皇国との戦いとは別の方向から世界を広げるエピソードが挟まります。この世界の神話と日本の関わりにも踏み込んでいて、戦記ものとしてだけでなく、世界の成り立ちを探る楽しみも増していきます。

合わないかもしれない人

一方的な戦闘が続くのが苦手な人

相手が列強の本国に変わっても、日本と皇国の技術差は圧倒的です。拮抗した攻防を期待すると物足りなさを、敵側の兵士に感情移入しやすいと重さを感じるかもしれません。

少数の主人公をじっくり追いたい人

本作は群像劇の色合いが強く、今巻も場面ごとに視点人物が次々と入れ替わります。国や組織の名前、初めて登場する人物も多いので、特定の主人公の成長や心情を軸に読みたい人には、落ち着かない構成に感じられる可能性があります。

感想・見どころ

※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。

この巻の楽しさは、大きく分けて「反撃の前に見えてくる各国の事情」「アルタラス島から始まる日本の反撃」、そして「追い詰められていく皇国の内側」の3つです。

反撃に向けた準備が進む前半は、大きな戦闘こそありませんが、各国の事情が見えてくるのが面白いところでした。日本の兵器を目の当たりにした機械文明の国ムーの人々は、同じ地球から来た国とはいえ技術の歩み方がまるで違うのだから、差が開いているのも仕方ないだろうなと、少し同情しながら読んでいました。日本の転移に巻き込まれた旧世界の大使たちが、この世界で第二の人生を歩んでいる様子にも触れられていて、大変だよなあと思わずしみじみします。

2巻で列強レイフォルを打ち破った新興国、グラ・バルカス帝国の見え方も変わりました。好戦的な国だと思っていたのですが、侵攻のきっかけには、使節として送り出した自国の皇族を相手国に処刑されたという事情があったのです。それなら怒るのも無理はないと感じます。そして何より怖かったのが、竜人族の国で行われる占いで、会ったこともない国の名前まで言い当ててしまうのは、占いというより予知の域でした。

中盤からは、公式あらすじのとおり、皇国に占領されていたアルタラス島で日本の反撃が始まります。そのあと皇国がどう出るのか、読みながらずっと気を揉んでいました。戦いが皇国の本土へ移っていくと、日本は一般市民への被害にかなり気を遣うのだろうなと、日本側の事情も想像しながら読み進めました。

この巻でいちばん印象に残ったのは、皇国の内側の描写です。前線から届く異常な報告が信じてもらえなかったり、現場に情報が届かないまま兵が送り出されていったりと、組織の「あるある」すぎる光景が次々に描かれます。敵側ながら、この先どうなるのやらともどかしくなりました。

皇国のやり方を見ていると、相手が弱ければ虐げ、強ければへりくだるという、相手によって態度を変える姿勢が一貫しています。ある意味では芯が通っているとも言えますが、日本という相手を読み違えたまま突き進む姿には、公式あらすじの「悪夢と絶望の序章」という言葉が重なりました。

エピローグでは、視点が一気にこの世界の外側へと広がっていきます。物語の舞台がまだまだ広がっていくことを感じさせる締めくくりでした。

まとめ

『日本国召喚』3巻は、アルタラス島の解放を皮切りに、日本の反撃が皇国本土へと広がっていく一冊です。皇国の現場と中枢、周辺国の視点から、列強の前提が崩れていく過程を立体的に追えるのが一番の魅力でした。

一方的な戦闘や視点の多さは好みが分かれますが、2巻で溜まった怒りの行き先を見届けたい人にはよく刺さるはずです。エピローグで一気に広がった世界が次にどう動くのか、4巻も楽しみです。

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