『俺は全てを【パリイ】する9~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~』(9巻)感想・ネタバレ解説
首都で救った双子の獣人と、奴隷オークションでリーンが下す決意
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★★★★★★★★★★4.0 / 5
奴隷が売り買いされる街で、ノールたちが救い出した双子の獣人。『俺は全てを【パリイ】する9~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~』(9巻)は、サレンツァの首都に入ったノールたちが、獣人や魔族が奴隷として売買されている現実を知り、やがて奴隷売買のオークション会場へ向かうまでを描く巻です。
著者は鍋敷、イラストはカワグチ。アース・スター ノベルから2024年11月に刊行されたシリーズ第9巻です。6巻から続く「商業自治区編」の4冊目で、あとがきによると、この巻は商業自治区編の「最後の仕込みの一巻」とのこと。
今巻の読みどころは、首都で出会う獣人の双子ミィナとリゲルの姉弟、奴隷売買という重い現実に向き合うノールたち、そしてオークション会場でリーンが下す決意です。
総合評価 ★4.0|首都サレンツァの暗い一面に踏み込みつつ、双子の姉弟や巻末の短編にほっとできる一冊。物語の謎が明かされていくという次巻が、ますます楽しみになりました。
目次
『俺は全てを【パリイ】する』はどんな作品?
冒険者の養成所で「才能なし」とされながら、唯一身についた防御技【パリイ】を磨き続けてきたノール。自分を最低ランクの冒険者だと信じたまま、王女リーンや【神盾】イネスとともに、王国を揺るがす騒動をくぐり抜けてきました。
9巻の舞台は、呼び出しを受けてたどり着いたサレンツァの首都。到着してすぐ、瀕死の状態だった双子の獣人を救い出したノールたちは、この街では獣人や魔族が奴隷として売り買いされているという事実を知ります。そして奴隷売買のオークション会場に足を運んだ一行でしたが、その実態を目の当たりにしたリーンは、ある行動を決意する――というのがこの巻の入口です。
発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、
俺は全てを【パリイ】する 9からどうぞ。
向いている人
商業自治区編を追ってきた人
6巻から続く商業自治区編の舞台が、いよいよサレンツァの首都へ移ります。これまで旅の途中で垣間見えてきたこの国の奴隷制度が、首都では街の当たり前として目の前に広がっていて、国の姿がぐっとはっきりしてきます。
ノールのまっすぐさが好きな人
路上で殴られている獣人の少女を見たノールは、この街の決まりでは止めた側が罰されると聞かされても、迷わず割って入ります。損得や立場を考えずに目の前の人を助けようとする、ノールらしさがよく出た巻です。
リーンの見せ場を楽しみにしている人
公式あらすじにもあるとおり、オークション会場の実態を目にしたリーンは、ある行動を決意します。ノールを「先生」と慕う王女リーンが、自分の意思で動く姿を見たい人には見逃せない一冊です。
合わないかもしれない人
奴隷売買など、重い題材が苦手な人
今巻は、獣人や魔族が奴隷として売り買いされる街が舞台です。人が物のように扱われる場面や、暴力をふるわれる描写もあるので、軽い勘違いコメディだけを期待していると、重く感じる場面があるかもしれません。
この巻から読み始めようとしている人
物語は8巻の出来事から地続きで始まり、ラシードやシャウザとの関係は、これまでの巻を読んでいる前提で進みます。少なくとも商業自治区編が始まる6巻から続けて読むのがおすすめです。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。展開に踏み込んだ内容は、末尾の折りたたみにまとめています。
この巻の楽しさは、大きく分けて「獣人の双子ミィナとリゲル」「奴隷売買の現実とリーンの決意」「巻末の短編と書き下ろし」の3つです。
首都に着いた一行がまず出会うのは、路上で持ち主の男に殴られていた獣人の少女ミィナ。ノールが割って入ったことで、ミィナを引き取るような流れになり、「これって買ったことになるのか?」と思わず首をかしげました。そこからミィナが、離ればなれになった双子の弟のことを打ち明け、物語が動き出します。
弟のリゲルは、体は弱いものの頭の回転がとても速い少年で、力持ちの姉ミィナとは正反対の双子です。大人顔負けの知恵で話についてくるリゲルには素直に感心しましたし、そんな彼と話す、サレンツァ家の長男で腕利きの商人でもあるラシードが、とにかく楽しそうなのも印象的でした。
首都の描写は、正直かなり重めです。獣人や魔族が奴隷として売り買いされ、それを周りの人たちが当たり前のこととして眺めている。ラシードがこの街の仕組みを淡々と説明するほど、ノールたちとの温度差が浮かび上がります。
そんな中で一行が足を運ぶのが、奴隷売買のオークション会場です。公式あらすじにあるとおり、その実態を目にしたリーンは、ある行動を決意します。王女として、そしてノールの弟子として、リーンがどう動くのかは、ぜひ本で確かめてほしいところです。
ノールの考えを周りが深読みしすぎる、シリーズおなじみの「逆勘違い」も今巻で健在です。とくにリーンのノールへの信頼の厚さは相変わらずで、「先生はそこまで考えていないと思うよ」と何度ツッコんだかわかりません。
巻末の短編【双子と老婆】は、ミィナとリゲルの双子と、二人がいた奴隷商館の受付の老婆のお話です。本編の重さのあとだけに、じんわりと温かい気持ちで読み終えられる一編でした。
特別書き下ろし「『時忘れの都』の休憩室」は、時忘れの都で働く職員たちの休憩時間をのぞく日常回です。何気ないおしゃべりから、この国にいながらまっとうな感覚を持った人たちだということが伝わってきて、好感が持てました。
まとめ
『俺は全てを【パリイ】する』9巻は、奴隷が売り買いされる首都サレンツァの暗い一面と、そこで出会う双子の獣人の姉弟、そしてリーンの決意を描く巻です。重い題材を扱いながらも、ミィナとリゲルの姉弟や、巻末の短編・書き下ろしには、ほっとできる温かさがありました。
あとがきによると、この巻は商業自治区編の「最後の仕込みの一巻」で、次の巻からは物語の謎もだんだん明かされていくとのこと。8巻まで読んで、首都で何が待っているのか気になっていた人は、ぜひこの巻で確かめてみてください。次巻への期待がぐっと高まる一冊です。
🔒 ネタバレあらすじを開く(クリックで表示)
首都に着いたノールは、つらい境遇にあった獣人の姉弟を迷わず救い出します。その気前の良さが、街の仕組みそのものを揺さぶり始めます。
年に一度のオークションをめぐる噂を追って、会場へ向かう一行。ところが入口で、ノールの剣が何者かに盗まれてしまいます。
ノールに代わって会場へ踏み込んだリーンたちを待っていたのは、仕組まれた罠でした。目の前の光景に、リーンはもう迷わないと心を決めます。
盗まれた剣の行方は、シリーズ全体の謎につながっていきそうです。剣を失ったノールと、不穏な言葉を残して去った者たち。続きは次の巻で。
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