『陰の実力者になりたくて! 03』(3巻)感想・レビュー
「無法都市」の不穏な舞台と陰の実力者ムーブが噛み合う巻

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★★★★★★★★★★4.5 / 5

逢沢大介先生『陰の実力者になりたくて!』の第3巻は、2019年7月にKADOKAWAから刊行された新文芸シリーズの一冊です。本巻の舞台は、危険な空気の漂う「無法都市」。始祖の吸血鬼の討伐や謎の少女メアリーとの出会いを軸に、これまでとは少しホラー寄りの雰囲気が漂います。不穏な状況ほどシドの陰の実力者ムーブが映える――その相性の良さが本巻の読みどころです。

総合評価 ★4.5|「無法都市」の不穏な舞台に陰の実力者ムーブが見事にハマる巻。ホラー風味とコメディの気持ちよさが両立し、シリーズにまた違う色が加わります。

目次

『陰の実力者になりたくて! 03』はどんな作品?

『陰の実力者になりたくて! 03』は、クレアに誘われて訪れた「無法都市」を舞台に、始祖の吸血鬼「血の女王」の討伐や、「最古のヴァンパイアハンター」を名乗る少女・メアリーとの出会いをきっかけに話が動いていく巻です。

無法都市には複数の勢力が存在し、吸血鬼や街の支配者たちに加えシャドウガーデンも関わってくるため、3巻はこれまで以上に勢力が入り乱れる面白さが出ています。ホラー寄りの舞台設定、勘違いコメディの面白さ、シドの陰の実力者らしい振る舞いがうまく噛み合った一冊で、不穏な空気はありつつも読み味は重くなりすぎず、軽快さもきちんと残っています。

発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、陰の実力者になりたくて! 03からどうぞ。

向いている人

少しホラーっぽい雰囲気のある作品が好きな人

無法都市の空気や吸血鬼討伐の流れには、ほんのりとした怖さや不気味さがあります。ただ強すぎるホラーではないので、重すぎないダークな雰囲気を楽しみたい人には合いやすいと思います。

強い主人公が特殊な状況を楽しむ作品が好きな人

シドは危機的な状況すら、自分にとって都合のいい舞台として楽しんでいるようなところがあります。そうしたズレた感覚が、この巻では特によく出ていて面白かったです。

陰の実力者ムーブを見たい人

ホラーや吸血鬼といった題材が、シドのこだわりとかなり相性がいいです。こういう状況なら、この主人公はどう動くのかを楽しみたい人にはかなり向いています。

独特な街や無法地帯の設定が好きな人

無法都市という舞台自体に雰囲気があり、普通の街とは違う危うさが感じられます。そういう舞台設定が好きな人も入りやすいと思います。

コメディ寄りでも先の展開や設定が気になる作品が好きな人

今回も笑える場面は多いのですが、それだけで終わらず、吸血鬼や始祖の血まわりの話が今後どうつながるのか気になる作りになっていました。

合わないかもしれない人

主人公の陰の実力者ムーブ自体が苦手な人

ここは3巻でも変わりません。作品の面白さの中心がシドの独特なこだわりにあるので、そこが合わないと楽しみにくいと思います。

シリアス一辺倒の異世界ファンタジーを求める人

吸血鬼や無法都市など設定だけ見るとかなりシリアス寄りですが、読み味はやはりコメディ色が強めです。重厚な雰囲気を求める人には少し違うかもしれません。

本格的なホラーやゾンビものを期待する人

ホラーっぽい空気はあるものの、恐怖を前面に押し出すタイプではありません。あくまでこの作品らしい味付けの中で楽しむホラー風味という印象でした。

緊張感のある接戦を重視する人

シドがかなり強いため、バトルは苦戦を味わうというより、圧倒的な側がどう場を動かすかを見る面白さが前に出ています。

感想・見どころ

※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。

『陰の実力者になりたくて! 03』の見どころは、やはり「無法都市」という舞台そのものと、そこで展開される吸血鬼討伐の流れでした。吸血鬼討伐には少しゾンビもののような不穏さもありましたが、シドが入ることで重くなりすぎず、この作品らしいコメディとして読めるのがよかったです。

まず印象に残ったのは今回の空気感です。これまでの巻にも独特の大げささはありましたが、3巻は無法都市という場所のおかげで最初からかなり怪しげな印象があります。吸血鬼、始祖、討伐依頼といった要素もあって、全体には少しホラー寄りの空気が漂っていました。

ただ、この作品はそこを重たくしすぎないのが面白いところです。普通なら不穏になりそうな状況でも、シドが入ることで一気にこの作品らしい場になります。怖さを楽しむというより、こういう状況をシドがどう自分好みに受け取るのかを見る面白さが強かったです。

特に良かったのは、ホラーっぽいシチュエーションがシドにとってはむしろ理想的な舞台装置になっているところでした。暗い街、危険な敵、正体不明の脅威という要素は、まさに陰の実力者らしい振る舞いにぴったりです。無法都市を貯金箱のように見ているシドの感覚もこの作品らしくて印象的で、危険な場所を別の意味でおいしい場所として見ているズレが笑えます。

物語としてもただのコメディで終わらず、吸血鬼や始祖の血、悪魔憑きとのつながりなど今後に関わりそうな要素もきちんと入っていました。メアリーの存在も今回の空気に合っていて、シド以外のキャラが場を引き締める役割を果たしていた印象です。

全体として3巻は、ホラー風味のある舞台設定とシドの陰の実力者ムーブの面白さがうまく噛み合った巻でした。しっかり怪しい雰囲気はあるのに読後感は重くなりすぎず、むしろこのシリーズらしい楽しさが強く残ります。前巻までの流れが好きだった人なら、舞台が変わったことでまた違う面白さが出ていて続けて読みやすい一冊だと思います。

まとめ

『陰の実力者になりたくて!』3巻は、無法都市という不穏な舞台にシドの陰の実力者ムーブが噛み合い、シリーズにまた違う色が加わった巻でした。吸血鬼討伐のダークな空気も、シドが入ることで重くなりすぎず、ホラー風味とコメディが心地よく両立しています。本格的なホラーを期待すると印象は異なりますが、舞台や雰囲気ごと作品を楽しみたい方にはおすすめ。読む楽しさの幅が広がる一冊です。

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