『剣と魔法と学歴社会 2 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~』(2巻)感想・レビュー
学園の外へ広がる、探索者としての第一歩

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★★★★★★★★★★4.0 / 5
『剣と魔法と学歴社会 2 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~』(2巻)西浦真魚(著)/まろ(イラスト)/KADOKAWA・カドカワBOOKS の書影

憧れの荒くれ者たちに交じっても、本人はあくまで下っ端のつもり。ただし何かあればためらわず手が出て相手を叩きのめすので、周りは彼を畏れるようになっていく。『剣と魔法と学歴社会 2 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~』(2巻)は、西浦真魚さんによるカドカワBOOKSの異世界転生ファンタジー(イラスト:まろさん/2023年刊行)。学歴至上の貴族社会で最難関エリート校に滑り込んだアレンが、今度は探索者として学園の外へ足を伸ばします。教室の中で完結していた1巻から一転、活動範囲そのものが広がっていく巻です。

総合評価 ★4.0|学園ものから探索者ものへと軸足を移し、シリーズの世界が一気に外へ広がる2巻。気負わないコメディの読みやすさはそのままに、主人公を取り巻く人間関係が増えていく面白さを味わいたい人におすすめです。

目次

『剣と魔法と学歴社会』はどんな作品?

『剣と魔法と学歴社会』は、出身校で人生が決まる学歴至上の貴族社会を舞台にした異世界転生ファンタジーです。前世で受験や資格試験に明け暮れたガリ勉社会人の記憶を取り戻した田舎貴族の三男・アレンは、今世こそ自由に生きるためにと前世のノウハウを注ぎ込み、最難関のエリート校へ合格しました。2巻では、アレンに憧れる同輩たちがオンボロ寮に押し寄せて騒がしくなる一方、本人は探索者としての活動に力を入れていきます。荒くれ者集団に憧れて互助会『りんごの家』に加わり、本人は下っ端のつもりで気ままに構えます。ところが何かあればためらわず手が出て相手を叩きのめしてしまうため、周囲の探索者からは次第に畏れられる存在になっていきます。学園では教師ゴドルフェンとのやり取りの末に魔法の師匠を紹介されるものの、その相手は入学試験で大揉めしたデューでした。

発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、剣と魔法と学歴社会 2 ~前世はガリ勉だった俺が、今世は風任せで自由に生きたい~からどうぞ。

向いている人

学園の外へ広がっていく展開を楽しみたい人

1巻が受験と入学をめぐる話だったのに対し、2巻は探索者としての活動が中心に据えられます。物語の舞台が教室の外へ開けていく感覚があるので、シリーズの世界が広がる手応えを求める人に向いています。

自己認識と周囲の評価がズレていくコメディが好きな人

本人は憧れの荒くれ者たちに交じる下っ端のつもりでいます。ところが実力が桁違いなうえ、何かあればすぐ手が出るので、周囲にとっては畏怖の対象。この自己認識とのズレが笑いどころになっています。

脇を固める登場人物が増えていく群像劇的な広がりが好きな人

探索者としての活動を通じて、主人公が関わる相手が一気に増えていきます。しかも新しく出会う人たちの人柄が良く、輪が広がるほど居心地が良くなっていくのがこの巻の魅力です。

目上の相手にも物怖じしない主人公のやり取りが楽しめる人

学園では教師ゴドルフェンとの応酬が変わらず健在です。相手が誰であろうと遠慮なく理屈をこねて渡り合う場面が多く、そのふてぶてしさを面白がれる人ほど楽しめます。

合わないかもしれない人

学園生活そのものをじっくり読みたい人

軸足が探索者活動に移るため、学園の描写は前巻より控えめです。学園ものとしての日常や授業風景を主目的に読むと、思ったより出番が少ないと感じるかもしれません。

1巻の受験パートのような密度を期待する人

受験勉強と試験に向けて積み上げていく1巻の緊張感は、この巻では別の形に置き換わっています。あの独特の面白さをそのまま続けて味わいたい人には、読み味の変化が物足りなく映る可能性があります。

主人公が関わる場面だけを追いたい人

主人公の与り知らないところで動く人間関係やエピソードにも、それなりの分量が割かれます。視点が分散する構成が苦手だと、寄り道に感じられるかもしれません。

感想・見どころ

※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。

『剣と魔法と学歴社会』2巻は、1巻で描かれた受験と入学の騒動が一段落し、主人公の活動範囲がぐっと外へ広がる巻でした。学園の中でほぼ完結していた前巻と比べると、探索者としての行動が話の中心に据えられていて、シリーズの見え方そのものが変わってきます。

その広がりを象徴していたのが、互助会でのやり取りでした。荒くれ者たちに憧れて飛び込み、本人はあくまで下っ端のつもり。ところが何かあればためらいなく手が出て、相手を力ずくで黙らせてしまいます。憧れて入ったはずの場所で、いつの間にか自分が一番恐れられているという構図が可笑しく、この作品らしいユーモアとして気持ちよく機能していました。

そのうえで印象に残ったのは、新しく関わる人たちがことごとく良い人だったことです。互助会のメンバーにしても、装備を選ぶ過程で世話になる相手にしても、主人公を取り巻く輪が広がるほど居心地の良さが増していく感覚がありました。探索者という物騒な肩書きのわりに、読み心地は終始おだやかです。

この物怖じのなさは学園側でも健在で、教師ゴドルフェンとのやり取りは相変わらず楽しかったです。相手が誰であろうと遠慮がなく、よくわからない理屈を並べて押し切ろうとする場面もあって、思わず言いすぎだろと突っ込みたくなるほど。その勢いが、魔法の師匠を得るまでの流れにもつながっていきます。

一方で、寮に同輩たちが押し寄せる騒動は、主人公の与り知らぬところで話が動いていくのが可笑しくもあり、少し気の毒でもありました。本人が絡まない場所で進んでいく関係も描かれていて、ラブコメ的な要素が好きな身としては、この先どう転がっていくのかが今から気になっています。

学園の話が控えめになったぶん、1巻の受験パートのような密度を期待すると物足りなさはあるかもしれません。ただ、世界が外へ開いていく手応えと、増えていく登場人物たちの気配は、シリーズを追う楽しみをしっかり広げてくれる巻でした。

まとめ

『剣と魔法と学歴社会』(2巻)は、学園の中で完結していた物語が、探索者としての活動を通して外へ広がっていく巻でした。憧れて飛び込んだ互助会で、下っ端のつもりの本人がいつの間にか一番畏れられているというズレが可笑しく、新しく関わる人たちの人柄の良さも印象に残ります。受験パートの密度を求めると学園要素の薄さは気になるかもしれませんが、世界と登場人物が増えていく手応えを楽しみたい人におすすめの一冊です。

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