★★★★★★★★★★4.0 / 5
列強を名乗る国が、従わない国々を力でねじ伏せていく。その理不尽の矛先が、ついに日本へ向けられます。『日本国召喚 二 滅びゆく栄光・上』(2巻)は、そんな緊張が少しずつ高まっていく一冊です。
みのろうによる国家転移ファンタジーのシリーズ第2巻で、イラストはtoi8。2017年にぽにきゃんBOOKSから刊行された作品を、2026年にカドカワBOOKSが再発行したものです。
列強の役人、振り回される周辺国、遠い機械文明の国、そして辺境の町と、1巻よりさらに視点が広がります。そのなかで日本の立ち位置が「謎の新興国」から少しずつ変わっていく過程が読みどころでした。
総合評価 ★4.0|理不尽な列強との対立が本格化する第2巻。世界の広がりと、日本が戦う理由が重く積み上がっていく読み味が魅力です。
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目次
『日本国召喚』はどんな作品?
『日本国召喚』は、ある日突然、日本が国ごと異世界へ呼び出されてしまう物語です。2巻では、第三文明圏でただ一つの列強国、パーパルディア皇国が物語の中心に据えられます。
皇国は自分たちに従わない周辺の国々を屈服させようと艦隊を送り出しますが、なぜかその作戦はたびたび失敗に終わります。その陰にいたのは、和平の交渉のために各国を回っていた日本でした。やがて日本は皇国から宣戦を布告され、この世界では倫理や人道が当たり前ではないことを思い知らされながら、列強と向き合っていくことになります。
なお、このカドカワBOOKS版はぽにきゃんBOOKS版の再発行で、小説の中身は変わっていません。変更点は書影と本扉のデザイン、口絵の文字サイズ、あとがきのみなので、旧版をお持ちの方は重複購入に気をつけてください。
発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、
日本国召喚 二 滅びゆく栄光・上からどうぞ。
向いている人
理不尽な列強に日本がどう向き合うかを見届けたい人
2巻の皇国は、周辺国への要求も外交の態度も容赦がありません。1巻よりも「話し合いで済むのか」という緊張がはっきりしていて、日本が引けなくなっていく過程を追うことになります。怒りを溜めながら読み進めるぶん、日本が決断する場面の重みも大きく感じました。
ムーをはじめ、世界の広がりに惹かれる人
機械文明を持つ列強ムーの人々にも、今回はしっかり出番があります。この国の成り立ちに関わる設定も語られ、日本とどんな関係を築いていくのか気になってきます。国と国の駆け引きだけでなく、世界そのものの謎が少しずつ見えてくるのが楽しいところです。
戦記ものの中にファンタジーらしさも欲しい人
列強との対立が軸にある一方で、途中には神話や伝承の世界に踏み込むような章が挟まります。国家同士の戦争とは毛色の違う相手が出てくるので、同じ巻の中で異なる手触りの戦いを味わえました。
異世界側から見た日本の描写が好きな人
日本を「文明圏外の新興国」と見下す側と、その力を目の当たりにした側で、日本の受け止め方がまったく違います。同じ出来事が国ごとにどう伝わり、どう信じられないまま流されていくのかが、視点を切り替えながら描かれていきます。
合わないかもしれない人
非道な描写が苦手な人
皇国は周辺国に対しても、日本に対しても、人を人とも思わないやり方で迫ってきます。物語が大きく動くきっかけにもなる場面ですが、読んでいて気持ちの重くなる出来事が含まれるので、苦手な方は心づもりをしておいたほうがいいと思います。
拮抗した戦いを期待する人
1巻に続いて、日本側の戦いは基本的に一方的に進みます。相手が列強に変わっても技術の差は大きく、手に汗握る攻防というより、圧倒的な力の差を見せつけられる読み味です。互角の緊張感を求めていると物足りなさを感じるかもしれません。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
プロローグは前巻の終わりから地続きで始まり、日本はこの先どうするのかと気を揉みながら読み始めました。そこへ列強ムーの人々も顔を出し、機械文明を持つこの国がどんな物語を背負っているのか、早くも知りたくなります。
その先で物語の中心になるのは、列強パーパルディア皇国に目を付けられた国々です。到底飲めない要求を突きつけられたある国の王には、読みながら思わず「頑張ってほしい」と肩入れしていました。
この流れの中で、第2章は急に毛色が変わります。列強同士の駆け引きから一転、神話や伝承の世界に踏み込むような展開で、「なんか急にファンタジーになった」というのが正直な第一印象でした。相手は話し合いの余地がなさそうな存在で、対話より対立に向かうのも自然に感じます。
そのうえで気になったのが、伝承の時代から長い時間が経っているのに、この世界の人々があまり強くなっていないように見えることです。兵器が進歩した可能性はあるにしても、伝承を残した「誰か」の正体まで想像が膨らみました。この手の作品を読むたびに浮かぶ「弾薬は足りるのか」という疑問が、ここでもつい頭をよぎります。
一方で第3章では、ムーという国の成り立ちに関わる面白い設定が明かされ、この国とは敵対しないままでいてほしいと願いたくなりました。気になっていた捕虜の扱いにも触れられています。そして同じ章の後半、皇国のある行いには「やりやがったな」と声が出ました。日本が黙っているはずのない出来事で、公式あらすじの「虎の尾を踏んだ」という言葉がここで一気に重みを増します。
こうして始まる戦いは、1巻に続いて日本側がほとんど損害を出さずに進みます。その合間に描かれる、皇国の人間にもきちんと礼を尽くすムーの大使の人柄も印象に残りました。このまま相手の本国まで行くのかと思いきや、終盤には戦争の性質そのものが変わりかねない方針が飛び出します。これはヤバい戦争になると身構えたところで幕引きです。
まとめ
『日本国召喚』2巻は、列強パーパルディア皇国の理不尽が日本に向けられ、対立が決定的になっていく過程を描いた一冊です。国々の視点が広がるなかで、ムーの設定や辺境で起きるもう一つの戦いが挟まり、世界の奥行きが一気に増したのが一番の魅力でした。
非道な描写や一方的な展開は好みが分かれるものの、日本が戦う理由を積み上げていく物語を読みたい人にはよく刺さるはずです。重さを増しそうな次巻も楽しみです。
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前巻の終わりに始まった列強の懲罰攻撃は、ただ一隻の艦に阻まれて失敗に終わります。パーパルディア皇国は自分たちの敗北を信じきれないまま、見えない敵の正体を探り始めます。その一方で周辺の国々は、皇国に逆らう後ろ盾として「ニホン」の名を口にするようになっていきます。
皇国の次の標的は、豊かな島国アルタラスでした。到底飲めない要求を突きつけられた王は抗戦を選び、娘である王女を国の外へ逃がします。海の上で危機に陥った王女の船を救ったのは日本の巡視船で、祖国に何が起きたのかを彼女が知るのは、遠い日本の地でのことになります。
同じころ、北の辺境トーパ王国では、神話に語られる存在が魔物の大軍を率いて姿を現します。列強に援軍を断られた王国のもとへ、日本は小さな部隊を送り出し、かつての勇者たちが命がけで封じた相手と向き合うことになります。戦いのあと、ある騎士は神話の記述と日本とのあいだに一つの共通点を見つけ、日本を呼び寄せたのは誰なのかという謎を深めていきます。
一方で日本は、機械文明の国ムーと国交を結び、皇国にも改めて国交を申し出ます。しかし対日外交を引き継いだ皇族の強硬な姿勢によって、交渉は最悪の形で決裂します。フェン王国にいた日本人をめぐるその出来事と、さらなる侵攻の宣言を受けて、日本はついに武力で皇国軍を排除すると決めます。
始まった戦いで、皇国軍は海でも陸でも経験したことのない相手と向き合います。その知らせと、日本で暮らしていた王女が世界に向けて発したある宣言は、皇国に支配されてきた人々に小さな希望を灯します。
怒りに染まった皇国が日本に突きつけた答えと、皇国の内側でひそかに動き出した一人の人物の思惑を残して、物語は次巻へ続きます。
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