「もし現代日本にダンジョンが現れたら」という設定の作品は、ライトノベルにも新文芸にもたくさんあります。ただ、同じ現代ダンジョンものでも、実際に読んでみると楽しみどころはかなり違います。ダンジョンが社会に与える影響をじっくり追う作品もあれば、学園生活と迷宮攻略を並べて描く作品、配信とコメント欄のツッコミで笑わせる作品、過去を背負った大人が主人公の作品もあります。
この記事では、たんぽぽ書庫で実際に読んでレビューを書いた作品の中から、現代ダンジョンものを4シリーズ選びました。数をそろえるために集めたのではなく、読んだ作品どうしを比べて「どんな人に合いやすいか」でタイプ分けしています。
目次
現代ダンジョン系ラノベ・新文芸おすすめ4選
| 読みたいタイプ | 作品 | 主人公 |
|---|
| 社会・設定・検証を楽しみたい | Dジェネシス ダンジョンが出来て3年 | 会社を辞めた元会社員・芳村 |
| 学園・カード・迷宮攻略を楽しみたい | モブ高生の俺でも冒険者になればリア充になれますか? | モブ高校生・北川歌麿 |
| 配信・コメント欄・コメディを楽しみたい | 【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者… | ドレス姿のお嬢様系配信者・山田カリン |
| 大人主人公・元英雄ものを読みたい | 『無刀』のおっさん、実はラスダン攻略済み | 元英雄の37歳サラリーマン・藍川英二 |
4作品とも「現代×ダンジョン」が土台ですが、力を入れているところがそれぞれ違います。どれが一番というより、いまどんな読み味を求めているかで選ぶほうが、自分に合う一冊に出会いやすいと思います。
なお、『Dジェネシス』と『無刀』のおっさんは単行本の新文芸、『モブ高生』と『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』は文庫のライトノベルです。
社会や設定の変化まで楽しみたいなら『Dジェネシス』
『Dジェネシス ダンジョンが出来て3年』(之貫紀/KADOKAWA)は、ダンジョンが出現して3年が経ち、攻略が社会の一部になった現代日本が舞台です。会社勤めをしていた芳村は、ある偶然から世界ランキング1位に名を連ねてしまいます。会社を辞めてのんびり暮らすつもりでいたのに、手に入れた未知のスキルと周囲の思惑によって、その生活からどんどん遠ざかっていきます。
この作品の面白さは、「それは何なのか」「どう使えるのか」を検証し、仮説を立てて一つずつ確かめていくところにあります。巻が進むと、世間の反応や組織との関わり、国家レベルの思惑、ダンジョンをめぐる制度や情報まで話が広がり、「現代社会にダンジョンがあったらこうなるかもしれない」という現実味が増していきます。
一方で、情報量はやや多めで、作品の軸は戦闘よりも検証や状況の整理にあります。派手な戦闘や強敵との連戦を求める人や、説明・考察が多い作品が苦手な人は好みが分かれるかもしれません。理屈で積み上げる攻略や設定を読み込む楽しさを味わいたい人、長めのシリーズをじっくり追いたい人に合いやすいシリーズです。
読む順番や各巻の感想を確認したい方は、シリーズまとめもどうぞ。
『Dジェネシス』の読む順番・各巻の感想はこちら
学園×カード×迷宮攻略なら『モブ高生』
『モブ高生の俺でも冒険者になればリア充になれますか?』(百均/ブレイブ文庫)は、1999年に世界中へ迷宮が出現した現代が舞台です。迷宮には人類の兵器が通じないモンスターもいて、攻略にはモンスターから得られるカードの力が欠かせません。主人公はモブ高校生の北川歌麿。「冒険者になればリア充になれるのでは」と考え、バイトで貯めたお金で一回百万円のガチャに挑み、冒険者への道を進みます。
学校での立場の変化と冒険者としての活動が並行して描かれ、戦いではカードをどう使うかを考える攻略が中心です。1巻の序盤では主人公に好印象を持ちにくかったものの、冒険者として行動し始めてから印象が変わったことをレビューでは書いています。
巻が進むと迷宮やカードの謎、不穏な要素も広がり、情報を読みながら攻略する面白さも増えていきます。
ハーレム寄りの賑やかさが苦手な人には合わない部分もありそうですが、学園生活と迷宮攻略を両方楽しみたい人や、情報を読んで戦うバトルが好きな人に合いやすい作品です。
1巻からの読み味は、1巻のレビューで紹介しています。
『モブ高生』1巻の感想・レビューはこちら
配信・コメント欄・コメディなら『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』
『【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホ程バズって伝説になってますわ!?』(赤城大空/ガガガ文庫)、通称『お嬢様バズ』は、ダンジョン探索と配信文化を掛け合わせたコメディです。
主人公は、ドレス姿でダンジョンに潜るお嬢様系配信者の山田カリン。視聴者ゼロの底辺配信者でしたが、配信を切り忘れたまま迷惑系配信者をボコボコにしてしまい、その一部始終がバズって一夜で伝説になります。
魅力の中心は、配信画面のコメントや掲示板パートのツッコミです。規格外なカリンの実力が少しずつ明かされていく中で、物語の外側から絶え間なくツッコミが飛び交い、笑いがどんどん大きくなっていきます。陰湿さがなく、カリンと友人の掛け合いも軽快なので、テンポよく読み進められます。1巻のレビューでは、配信系は合わないと思い込んでいたのに、良い意味で印象を裏切られたと書いています。
反対に、緊張感のあるシビアな攻略を求める人や、ネット文化のノリが苦手な人には合いにくいかもしれません。配信ものが好きな人や、肩の力を抜いて笑えるダンジョンものを探している人に合いやすいシリーズです。
読む順番や各巻の感想は、シリーズまとめにまとめています。
『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』の読む順番・各巻の感想はこちら
大人の元英雄主人公なら『無刀』のおっさん
『無刀』のおっさん、実はラスダン攻略済み(末松燈/電撃の新文芸)の主人公・藍川英二は、高校生の頃に八王子ダンジョンを攻略し、「無刀の英雄」と呼ばれた人物です。20年後のいまは37歳のサラリーマンとして、その過去を表に出さずに暮らしています。物語は、旧友の姪・未衣と一緒にダンジョンへ潜るところから動き出します。
この作品のダンジョンは冒険の場というだけでなく、巨大な利権や国際情勢が絡む市場で、売名や金儲けにも利用されています。かつての戦場だったダンジョンのこうした現状を前に、過去と力を隠して暮らしてきた英二が、少しずつ力を見せていく流れが見どころです。
若い主人公が成長していく物語とは違い、すでに大きな戦いを経験した大人が必要な場面で動く面白さがあります。レビューでは、似た現代ダンジョンものを読んだ直後でも、主人公の立場や背景の違いで印象がかなり変わったと書いています。1巻の時点では、力を隠してきた理由や過去の出来事など、明かされていないことも多く残っています。
ゼロからの成長物語や明るく軽いノリを求める人には方向性が違うかもしれませんが、力を隠した大人の主人公が再び動き出す話を読みたい人に合いやすい作品です。
作品の雰囲気や向いている人は、1巻のレビューで詳しく紹介しています。
『無刀』のおっさん1巻の感想・レビューはこちら
どの現代ダンジョン作品から読む?
もう一度、4作品を読み味で整理しておきます。
| こんな気分なら | 作品 | 読み味の目安 |
|---|
| ダンジョンが社会をどう変えるかを、考えながら読みたい | Dジェネシス | 検証型・情報量は多め・長く追えるシリーズ |
| 学校生活と迷宮攻略を両方楽しみたい | モブ高生 | カード攻略・巻を追うごとに謎が広がる |
| 気軽に笑えるダンジョンものが読みたい | お嬢様系底辺ダンジョン配信者 | コメント欄と掲示板のツッコミ・陰湿さのないコメディ |
| 大人の主人公で読みたい | 『無刀』のおっさん | 力を隠した元英雄・利権が絡むダンジョン |
迷ったときは、主人公の立場で選ぶのもひとつの方法です。高校生の主人公なら『モブ高生』と『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』、会社を辞めた元会社員なら『Dジェネシス』、37歳のサラリーマンなら『無刀』のおっさんになります。
読む重さで選ぶなら、テンポよく軽く読みたいときは『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』、腰を据えて設定を追いたいときは『Dジェネシス』が候補になります。『モブ高生』は明るい学園の空気と不穏な展開の両方があり、『無刀』のおっさんは若い主人公にはない落ち着きがあって、明るく軽いノリだけを求める人とは少し方向性が違う作品です。
まとめ
現代日本にダンジョンがある、という土台は同じでも、何に重心を置くかで読み味は大きく変わります。今回の4作品は、検証と社会の広がり、学園と迷宮攻略、配信とツッコミの笑い、過去を背負った大人が再び動く物語と、それぞれ違う方向から現代ダンジョンの面白さを描いています。
どれが上ということではなく、いまの気分や好みに近いものを選ぶのがいちばんです。気になるタイプから、まずは一作品選んでみてください。