★★★★★★★★★★4.0 / 5
グラ・バルカス帝国の脅威がはっきりした世界は、ついに本格的な戦争へ踏み出します。『日本国召喚 五 新世界大戦』(5巻)は、神聖ミリシアル帝国を中心とした世界連合艦隊と、グラ・バルカス帝国の艦隊がぶつかる大海戦を描く一冊です。
みのろうによる国家転移ファンタジーのシリーズ第5巻で、イラストはtoi8、兵器などの口絵・本文イラストは高野千春が担当しています。2019年にぽにきゃんBOOKSから刊行された作品を、2026年にカドカワBOOKSが再発行したものです。
今巻の日本は世界連合艦隊には加わらず、損傷したムーの戦艦『ラ・カサミ』の改修という形で戦争に関わります。異世界の国々がそれぞれの事情と覚悟を背負って戦場へ向かい、ページの多くを海戦が占める、戦記色の濃い巻です。
総合評価 ★4.0|世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国が総力でぶつかる第5巻。国ごとの視点で追う大海戦の迫力と、古代の超兵器まで飛び出す戦況の読めなさが魅力です。
ポチップ
目次
『日本国召喚』はどんな作品?
『日本国召喚』は、ある日突然、日本が国ごと異世界へ呼び出されてしまう物語です。5巻では、神聖ミリシアル帝国の皇帝ミリシアル8世が「世界連合軍」の結成を命じ、グラ・バルカス帝国の艦隊を討つため、各国の艦隊がカルトアルパスに集まります。
日本も参戦を打診されますが、敵の航空戦力に対して航空優勢を確保できないことなどから、艦隊の派遣を見送ります。その代わりに引き受けるのが、友好国ムーの戦艦『ラ・カサミ』の改修です。一方のグラ・バルカス帝国も、連合艦隊を迎え撃つ主力とは別に、ムーの都市を狙う部隊を動かし始めます。
なお、このカドカワBOOKS版はぽにきゃんBOOKS版の再発行で、小説の中身は変わっていません。カバーイラストの一部、書影と本扉のデザイン、口絵の文字の大きさ、あとがきに変更があるので、旧版をお持ちの方は重複購入に気をつけてください。
発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、
日本国召喚 五 新世界大戦からどうぞ。
向いている人
国と国がぶつかる大規模な海戦をじっくり読みたい人
第6章と第7章はまるごとバルチスタ海域の海戦に充てられています。空母から飛び立つ航空機、竜騎士団の突撃、魔導艦隊の対空弾幕と、戦い方のまったく違う国々がひとつの海でぶつかり、戦況が刻々と動いていくのを追う読み応えがあります。
魔法文明と機械文明の対決を楽しみたい人
神聖ミリシアル帝国は古の魔法帝国が遺した空中戦艦まで持ち出し、第二次世界大戦期の工業国家のような艦隊を持つグラ・バルカス帝国と向き合います。著者があとがきで「文明体系そのものの違い」がぶつかる戦いにしたかったと語るとおり、兵器の強さだけでは決まらない攻防が見どころです。
日本以外の国の意地や覚悟に惹かれる人
弔い合戦として参戦を決める国もあれば、日本の手で生まれ変わった戦艦に祖国を守る望みを託すムーの軍人たちもいます。異世界の国々が単なる引き立て役ではなく、それぞれの矜持を持って戦場に立つ姿が描かれています。
合わないかもしれない人
日本の活躍を中心に読みたい人
日本は大海戦に艦隊を送らないため、物語の多くは神聖ミリシアル帝国やムー、グラ・バルカス帝国の視点で進みます。自衛隊が前線に立つ場面は限られるので、日本の戦いぶりをたっぷり読みたい人には物足りなく感じるかもしれません。
登場する国や艦、人物の多さに戸惑いやすい人
海戦には多くの国の艦隊と部隊が加わり、艦名や指揮官の名前が次々に登場します。巻末の用語集や章末の地図が助けになりますが、細かな人物を追いながら読みたい人は少し大変に感じるかもしれません。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
第5章では、グラ・バルカス帝国への報復作戦が動き出します。日本は参戦しないのかと思いながら読んでいました。国民感情を考えれば参戦しそうなものですが、実際に艦隊を送るとなると難しいのだと感じます。帝国にも潜水艦があるのかと驚きつつ、そういえば潜水艦っていつ頃からあるんだろう、とふと気になったりもしました。日本近海での初めての交戦では技術力の差がはっきり出ていて、追い詰められた帝国がヤケを起こさなければいいけど、と少し心配になります。そして帝国側に日本の技術力が知られてしまう場面では「あ、ばれた」と思ったものの、どうやら上まで真剣には受け止めてもらえなさそうで……。
第6章でいよいよバルチスタ沖の大海戦が始まります。序盤から世界連合側は劣勢で、口絵にも描かれていたあのとてつもなく大きな兵器はまだ出てこないのか、とやきもきしながらページをめくりました。
第7章でついに古代兵器が登場します。これが落とされるようなら、日本にも対抗できる兵器があるということになるけれど……と思っていたら、圧勝の勢いでした。もしこれが日本に向けられたら、どう防ぐのでしょう。アニメの宇宙戦艦のようなものがあれば対抗できそうでも、現実にはないしなあ、と考え込んでしまいます。ただ、無敵に見えた古代兵器にもつけ入る隙があると分かる場面があり、それなら対抗策はありそうだと少しほっとしました。
第8章は、舞台をムーの近海に移しての戦いです。ある戦いのあまりに一方的な展開には、言葉も出ませんでした。巻の終わりには、ようやく情報をしっかり精査し始めた「第八帝国」ことグラ・バルカス帝国の動きが描かれていて、この先どうなることやら気になります。
まとめ
『日本国召喚』5巻は、世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国が正面からぶつかり、古代の超兵器まで戦場に現れる一冊です。国ごとの視点で大海戦を追う迫力と、どちらに転ぶか読めない戦況の緊張感が一番の魅力でした。
日本の出番の少なさや、登場する国・艦・人物の多さは好みが分かれますが、異世界の国々が自らの意志で戦う戦記を読みたい人にはよく刺さるはずです。
🔒 ネタバレあらすじを開く(クリックで表示)
本土まで爆撃された神聖ミリシアル帝国は世界連合軍の結成を決め、各国の艦隊がカルトアルパスに集まります。参戦を打診された日本は派遣を見送り、皇帝は国内に残る油断を戒めて、秘蔵の古代兵器も戦場へ送り出します。
日本は損傷したムーの戦艦『ラ・カサミ』を5ヶ月で改修し、生まれ変わった艦を護衛隊群とともにムーへ送り届けます。
日本の近海にはグラ・バルカス帝国の潜水艦が現れ、両国は初めて刃を交えます。帝国の情報局では、ある技官が一冊の本から日本の本当の力に気づきますが、その訴えは上司に取り合ってもらえません。
帝国は主力で連合艦隊を迎え撃つ一方、残虐さで恐れられる部隊に、ムーの首都と商業都市への攻撃を命じます。
バルチスタ海域で始まった大海戦では、帝国の航空攻撃が世界連合艦隊を襲い、各国の竜騎士や艦が次々と失われていきます。別の方角から迫った神聖ミリシアル帝国の魔導艦隊も、やがて空からの攻撃にさらされます。
ついに空中戦艦『パル・キマイラ』が戦場に現れ、帝国の艦隊と航空機を圧倒していきます。撤退の勧告を拒んだ帝国の巨大戦艦は、ある一撃に帝国の命運を懸け、海戦は双方に大きな損失を残して終わります。
大海戦の後、ムーの首都と商業都市には帝国の部隊が迫ります。首都へ向かう艦隊の前には、遅れて出撃した『ラ・カサミ』改が立ちはだかります。商業都市の沖では、休暇中だった日本の護衛隊群が、警告を条件に武器の使用を許されて敵を待ち受けます。
戦いの結果は各国に大きな衝撃を与え、ムーは迫る陸上侵攻を前に日本へ助けを求めます。そして帝国は、ついに日本という国を本格的に調べ始めます。
『日本国召喚』の購入はこちら
紙書籍/電子書籍はこちら ↓
ポチップ
似た雰囲気の作品はこちら