『日本国召喚 四 崩れる均衡』(4巻)感想・レビュー
先進11カ国会議を境に世界の力関係が揺らぎ始める

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★★★★★★★★★★4.0 / 5
『日本国召喚 四 崩れる均衡』(4巻)みのろう(著)/toi8(イラスト)/KADOKAWA・カドカワBOOKS の書影

パーパルディア皇国との戦いを終えた日本の前に、今度は世界の頂点に立つ国々が姿を現します。『日本国召喚 四 崩れる均衡』(4巻)は、列強が一堂に会する国際会議を舞台に、この世界の力関係そのものが揺らぎ始める一冊です。

みのろうによる国家転移ファンタジーのシリーズ第4巻で、イラストはtoi8、今巻から兵器などの口絵・本文イラストを高野千春が担当しています。2018年にぽにきゃんBOOKSから刊行された作品を、2026年にカドカワBOOKSが再発行したものです。

これまでの巻が日本と異世界の国々との出会いや衝突を描いてきたのに対し、今巻は日本の外側で大国同士が動き出します。技術で優位に立ってきた日本にとっても、決して他人事では済まない出来事が続き、ページをめくる手が重くなる場面も少なくありませんでした。

総合評価 ★4.0|列強の思惑が交錯し、世界の均衡が崩れ始める第4巻。大国同士の衝突を多くの視点で追う読み応えと、日本も無傷ではいられない緊張感が魅力です。

目次

『日本国召喚』はどんな作品?

『日本国召喚』は、ある日突然、日本が国ごと異世界へ呼び出されてしまう物語です。4巻では、この世界で最強と目される神聖ミリシアル帝国が、2年に1度開かれる「先進11カ国会議」に日本を招きます。

同じ会議に初めて参加するのが、機械文明を持つ謎多き国、グラ・バルカス帝国です。本国の場所さえ明かさず、周辺国を力で従えていくこの帝国の存在が、会議の場に集った列強たちの前提を大きく揺さぶっていきます。

なお、このカドカワBOOKS版はぽにきゃんBOOKS版の再発行で、小説の中身は変わっていません。イラストの一部、書影と本扉のデザイン、あとがきに変更があるので、旧版をお持ちの方は重複購入に気をつけてください。

発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、日本国召喚 四 崩れる均衡からどうぞ。

向いている人

日本と渡り合える相手との対立を見たい人

3巻までは日本の技術が相手を圧倒する展開が中心でしたが、今巻で存在感を増すグラ・バルカス帝国は、日本と同じく機械文明を理解する側の国です。一方的には進まない緊張感があり、「この相手にはどう向き合うのか」と身構えながら読みたい人に向いています。

大国同士の思惑を国ごとの視点で追いたい人

神聖ミリシアル帝国、ムー、グラ・バルカス帝国、そして帝国に脅かされる小さな王国と、今巻は日本の外にいる国々の視点が大きな比重を占めます。会議の駆け引きから前線の兵士、酒場の民衆まで、立場によって戦争の見え方がまるで違うのが面白いところです。

世界の裏に潜む謎にも惹かれる人

戦争の合間には、古の魔法帝国の復活を告げる占いや、本国の姿を隠す南方の大国など、この世界の奥行きを感じさせるエピソードが挟まります。すぐには答えの出ない伏線が増えていくので、戦記の先にある世界の全体像が気になる人ほど楽しめるはずです。

合わないかもしれない人

日本の活躍をたっぷり読みたい人

今巻は神聖ミリシアル帝国や帝国に狙われた王国など、日本以外の国の場面が多くを占めます。日本の外交や自衛隊の活躍を中心に読みたい人には、日本の出番が控えめに感じられるかもしれません。

救いの少ない重い展開が苦手な人

グラ・バルカス帝国の容赦のなさが際立つ巻で、読後にやりきれなさが残る出来事もあります。爽快な反撃を期待して読むと、重さのほうが強く残る可能性があります。

感想・見どころ

※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。

この巻の楽しさは、大きく分けて「世界の頂点に立つ国から見た日本」「容赦のない新興国グラ・バルカス帝国」、そして「戦争のさなかでもたくましい人々」の3つです。

プロローグでは、この世界で最強と言われる神聖ミリシアル帝国の使節団が日本を訪れます。自慢の贈り物である卓上計算機が、日本側の見せたスマートフォンに圧倒されてしまうなど、世界一の国の使節団でさえ日本の技術に驚かされる場面が続きます。フィクションだから仕方ないとはいえ、何かしら同等の技術を持つ相手がいないと不思議さのほうが勝つよな、と思いながら読んでいました。伝承に残る、かつて存在した魔法帝国あたりがそのポジションなのかもしれません。

そこへ現れるのが、日本と同じく先進11カ国会議に初めて招かれたグラ・バルカス帝国です。本国の場所さえ明かさない謎の国で、なかなかに血気盛ん。これはまたしても戦争になるのかと、早くも身構えてしまいました。

実際、帝国は想像以上に容赦のない国でした。帝国から従属か死かを迫られた島国イルネティア王国では、17歳の王子エイテスが、ほかの国々に助けを求める外交の旅に出ます。追い詰められた状況でもまともな感性を失わない王子で、好感が持てました。

そして舞台は、列強が一堂に会する国際会議へ。あらすじにある「全世界への宣戦布告とも取れる挑発」が飛び出す場面から、この巻の空気は一変します。ここから先は日本にとっても他人事では済まない展開が続き、読みながら何度も声が出ました。中身はぜひ本編で見届けてください。

シリーズを追ってきた人には、1巻で日本と戦ったロウリア王国の元将軍アデムが再び姿を見せるのも見逃せないところ。この人物に引導が渡されるのはいつになるのか、今後も気になります。

重い展開が続くなかで印象に残ったのが、戦争のさなかでもたくましい人々の姿です。戦場に近い街の酒場では、作業帰りの人たちが日本から輸入したビールを飲みながら戦況を語り合っていて、その豪胆さには驚かされました。日本の技術をしっかり取り込もうとするムーのしたたかさも、この世界の国々の地力を感じさせます。

まとめ

『日本国召喚』4巻は、先進11カ国会議をきっかけに、グラ・バルカス帝国という新たな列強が世界の力関係を揺さぶっていく一冊です。大国同士の思惑と戦況を国ごとの視点で追えるのが一番の魅力で、日本にとっても他人事では済まない緊張感が、シリーズに新しい重みを加えていました。

日本の出番の少なさや重い展開は好みが分かれますが、世界の頂点側で何が起きているのかを見届けたい人にはよく刺さるはずです。3巻までの一方的な戦いとは手ごたえの違う相手が現れるので、「日本が強すぎて張り合いがない」と感じていた人ほど、この巻から一気に引き込まれると思います。

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