『日本国召喚 六 激動のムー大陸』(6巻)感想・レビュー
戦場が海から陸へ移り自衛隊が前線に立つ

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★★★★★★★★★★4.0 / 5
『日本国召喚 六 激動のムー大陸』(6巻)みのろう(著)/toi8(イラスト)/KADOKAWA・カドカワBOOKS の書影

世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国の大海戦を経て、戦いの場はついに陸へ移ります。『日本国召喚 六 激動のムー大陸』(6巻)は、帝国陸軍がムー大陸へ攻め込み、日本が本格的な参戦へ踏み切るまでを描く一冊です。

みのろうによる国家転移ファンタジーのシリーズ第6巻で、イラストはtoi8、兵器などの口絵・本文イラストは高野千春が担当しています。2020年にぽにきゃんBOOKSから刊行された版を底本とし、2026年にカドカワBOOKSが再発行したものです。

今巻で前に出てくるのは、戦場の外側まで広がっていく戦争の姿です。海の上では日本の民間船が襲われ、国境の街には帝国陸軍が迫り、外交官は時間を稼ぐために宣戦布告を受けた相手国へ乗り込みます。物流や外交、住民の暮らしまでを巻き込みながら、戦争が国全体へ染み出していきます。

総合評価 ★4.0|戦いが海から陸へ移り、自衛隊がついに前線に立つ第6巻。圧倒的な力の差が生む戦いの描写と、帝国や周辺国が少しずつ日本という国の輪郭をつかんでいく過程が読みどころです。

目次

『日本国召喚』はどんな作品?

『日本国召喚』は、ある日突然、日本が国ごと異世界へ呼び出されてしまう物語です。6巻では、グラ・バルカス帝国がムー大陸の国境沿いに陸軍を集めて基地を築き始めます。ムーは日本へ軍事支援を求め、日本政府は法整備や補給の課題を抱えながらも、自衛隊のムー派遣を決めます。

展開が整うまでの時間を稼ぐため、外交官の朝田は帝国の出先機関へ乗り込み、日本の歩んできた道を示して撤退を求めます。一方の帝国では、第1皇太子グラカバルが周囲の制止を振り切って最前線の視察に向かおうとしていました。

なお、このカドカワBOOKS版は2020年に刊行されたぽにきゃんBOOKS版の再発行で、小説の中身は変わっていません。書影と本扉のデザイン、口絵の文字の大きさ、あとがきに変更があるので、旧版をお持ちの方は重複購入に気をつけてください。

発売日や著者などの作品データを先に確認したい方は、日本国召喚 六 激動のムー大陸からどうぞ。

向いている人

陸の戦いと兵器の描写を読みたい人

今巻の主戦場は海ではなく地上です。戦車隊が国境を越え、砲兵が観測を頼りに射撃し、戦闘機が空を押さえる。魔石の山を貫く空洞山脈という独特の地形も舞台になり、それぞれの兵科がどう噛み合うのかを追う面白さがあります。巻末の用語集では火砲や戦車の諸元まで解説されています。

戦場の外側まで含めた戦争を見たい人

民間船への攻撃、住民の疎開、占領地での暮らし、外交交渉、そして報道。著者があとがきで、実際の戦争は前線だけで完結せず、物流や経済まで含めて国家全体へ広がっていくと語るとおり、戦闘以外の場面にもしっかりページが割かれています。

相手側が「気づいていく」過程を追いたい人

帝国の外交官、前線の司令部、艦隊の幹部、そして神聖ミリシアル帝国の情報局。立場も情報源も違う人たちが、それぞれ別の資料から日本という国の正体に近づいていきます。断片が少しずつ像を結んでいく過程は、今巻でとくに読ませる部分です。

合わないかもしれない人

拮抗した攻防を読みたい人

日本と帝国の間には技術と装備の差がはっきりあり、戦いはどうしても一方的になりがちです。どちらに転ぶかわからない緊張感を求める人には、物足りなく感じる場面があるかもしれません。

非戦闘員が巻き込まれる描写が苦手な人

逃げ遅れた住民や避難民、占領された街の扱いなど、目を背けたくなる場面がいくつも出てきます。侵攻する側の指揮官の姿勢も容赦なく書かれるので、そうした描写が苦手な人は注意が必要です。

感想・見どころ

※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。

この巻の楽しさは、大きく分けて「日本が本格的に動き出すまで」「外交官・朝田さんの奮闘」、そして「前線へ向かう帝国の皇太子」の3つです。

読み始めてまず気になっていたのは、4巻でグラ・バルカス帝国から受けた大きな痛手に、日本がどう落とし前をつけるのかでした。自国の守りが薄くなるという話も出ていただけに、そこが片づくまでは動かないのだろうか、などと考えながら読み進めます。あらすじにあるとおり、友好国ムーの危機を前に日本は自衛隊の派遣を決め、戦いの舞台はいよいよ陸へ移ります。

個人的に印象に残ったのは、帝国との交渉を担う外交官の朝田さんです。自衛隊の展開が整うまでの時間を稼ぐため、宣戦布告を受けた相手の出先機関へ乗り込むという難しい役回りを任されながら、与えられた命令どおりの結果をきちんと持ち帰るので、これは評価も上がるよなあと感心しました。

5巻では大海戦に艦隊を送らなかった日本が、この巻ではとうとう前線に立ちます。戦車隊や砲兵、戦闘機がそれぞれの役割で噛み合っていく陸の戦いは、海戦が中心だったこれまでとは違う読み味です。「ついに始まる」と身構えて読んだ戦いの手ごたえは、ぜひ本編で確かめてください。

そして巻の終盤は、グラ・バルカス帝国の皇太子グラカバルの章です。帝国の雑誌に「温室育ち」と書き立てられた皇太子が、臆病者と言われたくない一心で、周りの制止を振り切って最前線の視察に向かおうとします。この状況で皇太子が動くとなると大変なことになる気がしてなりませんし、周りが必死に止めようとするのも納得でした。雑誌に書かれた一言をきっかけに、帝国の跡継ぎが自ら危険な最前線へ向かってしまうのですから、国にとってはたまったものではありません。あんな書き方をした雑誌もさすがにどうなのか、とすら思います。ともあれ、ここから何かが始まりそうな気配を残して巻は閉じます。

まとめ

『日本国召喚』6巻は、戦いの場が海から陸へ移り、自衛隊がムー大陸の前線に立つ一冊です。物流や外交、占領下の暮らしまで含めて、戦争が国の隅々へ広がっていく様子が描かれます。

戦いが一方的になりがちな点は好みが分かれますが、帝国や周辺国が少しずつ日本という国の輪郭をつかんでいく過程は、この先への布石としてとても面白く読めました。5巻で日本の出番が少なく物足りなかった人ほど、自衛隊が前線に立つこの巻は待っていた展開のはずです。皇太子が前線に立ったところで巻が閉じるので、続きが気になる終わり方です。

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