配信ものやVTuberものと一口にいっても、読み味は作品によってかなり違います。企業所属VTuberの活動を現実寄りに描く作品もあれば、コメント欄の悪ノリで笑わせるコメディ、ダンジョン配信で一気にバズる話、未来の知識を持って配信者人生をやり直す話もあります。
この記事では、たんぽぽ書庫で実際に読んでレビューを書いた作品の中から、配信やVTuberが物語の中心にある4シリーズを選びました。順位は付けず、配信ものに何を求めるかでタイプ分けしています。
目次
配信・VTuber系ラノベ・新文芸おすすめ4選
| 読みたいタイプ | 作品 | 主人公 |
|---|
| 配信者としての日常や炎上まで読みたい | アラサーがVTuberになった話。 | VTuber・神坂怜としてデビューしたアラサー |
| コメント欄とキャラ同士の掛け合いで笑いたい | 妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 | 妹の配信に声が乗り「兄者」と呼ばれる兄 |
| ダンジョン配信で爽快にバズる話を読みたい | 【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホ程バズって伝説になってますわ!? | ドレス姿でダンジョンに潜る底辺配信者・山田カリン |
| 未来知識でやり直す成り上がりを読みたい | 【やり直し】最強ダンジョン配信者! | 10年前の世界に戻った配信者・ハルカ |
4作品とも配信が物語の重要な要素になっています。ただ、舞台にダンジョンがあるかどうか、配信で何が起きるのかはそれぞれ違います。どれが上というより、いま読みたいのが配信者の日常なのか、気軽な笑いなのか、バズの爽快感なのか、やり直しの気持ちよさなのかで選ぶと、自分に合う作品を見つけやすいと思います。
なお、『アラサーがVTuberになった話。』は単行本の新文芸、ほかの3作品は文庫のライトノベルです。
配信者の日常をじっくり読むなら『アラサーがVTuberになった話。』
『アラサーがVTuberになった話。』(とくめい/KADOKAWA)は、ブラック企業を辞めたアラサーの主人公が、妹の後押しでバーチャルタレント企業に所属し、VTuber・神坂怜としてデビューする物語です。ダンジョンや異世界の冒険はなく、描かれるのは企業所属VTuberとしての日々の活動そのものです。
女性VTuberが中心の事務所で男性Vとして活動する主人公には、デビュー直後から厳しい目が向けられ、炎上やアンチの描写も出てきます。それでも話が沈みすぎないのは、掲示板パートや視聴者の反応が作品の空気をほどよく軽くしているからです。登場人物は1巻から多めですが立ち位置が分かりやすく、巻が進むにつれて周囲の配信者との関係も広がっていきます。大変な状況でもひねくれずに前へ進もうとする主人公を、応援しながら読める作品です。
派手なバトルや冒険を期待すると物足りないかもしれません。炎上やアンチの描写が苦手な人や、VTuber文化に馴染みがない人も、入りにくさを感じる可能性があります。1巻から情報量が多いので、さくっと読むより、配信者の日常をじっくり追いたい人に合いやすいシリーズです。
1巻の読み味は、1巻のレビューで紹介しています。
『アラサーがVTuberになった話。』1巻の感想・レビューはこちら
コメント欄と賑やかなコメディなら『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件』
『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件』(江波界司/ブレイブ文庫)は、名家の令嬢という設定で活動する人気VTuber・春風桜が、配信をつけたまま寝落ちしてしまうところから始まります。マイクが拾ったのは、ゲームを取りに部屋へ入ってきた実の兄の声でした。この配信事故をきっかけに、兄はリスナーから「兄者」と呼ばれ、妹のVTuber活動へ巻き込まれていきます。
読みどころは、配信の中身より、それを眺めている側が勝手に盛り上がっていくコメント欄の悪ノリです。投げ銭に添えられた一言まで作り込まれていて、そこへ叫ぶオタク女子や酒乱の雪女、ゲーマー気質の魔王といった濃い面々と兄妹の掛け合いが重なります。律儀に落とし前をつけようとする兄が、かえって深みにはまっていくのも笑いどころです。1話ごとに小さな事故が起きてその場で片づく短編の連なりで、重い展開はほとんどありません。
一方で、区切りがきれいなぶん、一気読みできる長編を求める人には勢いがつきにくく感じられるかもしれません。話の並び順と時系列がそろっていない部分もあります。すき間時間に少しずつ、気楽に笑いたいときに向いている作品です。
1巻の読み味は、1巻のレビューで紹介しています。
『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件』1巻の感想・レビューはこちら
ダンジョン配信でバズる爽快感なら『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』
『【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホ程バズって伝説になってますわ!?』(赤城大空/ガガガ文庫)の主人公は、ドレス姿でダンジョンに潜るお嬢様系配信者・山田カリンです。視聴者も登録者もごくわずかな底辺配信者でしたが、下層で出くわした迷惑系配信者を義憤に駆られてボコボコにしてしまい、しかも配信は切り忘れたまま。その一部始終がバズり、一夜にして伝説の配信者になります。
とんでもない場面ほど、配信画面のコメントや掲示板パートのツッコミが冴えていて、物語の外側から飛び交う反応で笑いが大きくなっていきます。カリンと友人たちの掛け合いも軽快で、陰湿さや嫌な空気がないため、テンポよく読み進められます。配信系は苦手だと敬遠していた人にこそ手に取ってほしい、とレビューで書いた作品です。
ダンジョン探索はあっても緊張感よりコミカルさが前に出るので、シビアな攻略ものを求める人には方向性が違うかもしれません。3巻からはシリアスな空気も加わるため、最後までギャグ一色であってほしい人は気になる場面がありそうです。肩の力を抜いて笑えるダンジョン配信を読みたい人に合いやすいシリーズです。
読む順番や各巻の感想は、シリーズまとめで紹介しています。
『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』の読む順番・各巻の感想はこちら
未来知識で配信人生をやり直すなら『【やり直し】最強ダンジョン配信者!』
『【やり直し】最強ダンジョン配信者! 突然10年前の世界に戻ったので全てをやり直す!』(もちぱん太郎/HJ文庫)も、ダンジョンのある現代日本が舞台です。主人公ハルカは、10年後の世界で社畜のように働く配信者でしたが、不思議な現象で10年前へ戻ってしまいます。
ハルカの武器は、未来で得た10年分の知識と、社畜時代に培ったスキルです。強い装備や有能な仲間を最速で押さえ、悪い結末をたどるはずだった人を救いながら、配信者として人生をやり直していきます。偶然のバズから始まる『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』とは違い、先を知っている主人公が最短ルートを選んでいくテンポの良さが持ち味です。探索だけでなく配信で「どう見せて盛り上げるか」も描かれ、ざまぁやクラフトっぽい要素まで混ざった全部乗せの作品になっています。
要素がいろいろ混ざっているので、硬派に攻略だけを読みたい人には方向性が違うかもしれません。1巻は物語が始まったところで続きへつながる作りなので、1冊で区切りたい人も注意が必要です。未来知識で先回りする気持ちよさや、配信での成り上がりを楽しみたい人に合いやすい作品です。
1巻の読み味は、1巻のレビューで紹介しています。
『【やり直し】最強ダンジョン配信者!』1巻の感想・レビューはこちら
どの配信・VTuber作品から読む?
もう一度、4作品を読み味で整理しておきます。
| こんな楽しみ方をしたいなら | 作品 | 読み味の目安 |
|---|
| 企業所属VTuberの活動や、配信者を取り巻く環境までじっくり読みたい | アラサーがVTuberになった話。 | 現実寄りの配信者日常・炎上や掲示板・登場人物が多い |
| コメント欄の悪ノリと濃いキャラの掛け合いで気軽に笑いたい | 妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件 | 配信事故から始まる兄妹コメディ・1話ごとに片づく短編 |
| ダンジョン配信で一気にバズる痛快さを楽しみたい | お嬢様系底辺ダンジョン配信者 | 偶然のバズ・コメント欄と掲示板のツッコミ・陰湿さのない軽さ |
| 未来の知識で先回りしながら成り上がる話を読みたい | 【やり直し】最強ダンジョン配信者! | 10年前からのやり直し・最短ルートの攻略・要素の全部乗せ |
迷ったときは、まず舞台で分けてみるのもひとつの方法です。ダンジョンのない現実寄りの配信を読みたいなら『アラサーがVTuberになった話。』と『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件』、ダンジョン配信を読みたいなら『お嬢様系底辺ダンジョン配信者』と『【やり直し】最強ダンジョン配信者!』が候補になります。
そのうえで、読むペースや話の動き方で選べます。VTuberの2作品なら、腰を据えて配信者の日常を追いたいときは『アラサーがVTuberになった話。』、すき間時間に少しずつ笑いたいときは『妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件』です。ダンジョン配信の2作品なら、バズが偶然転がり込んでくるおかしさを楽しみたいか、先を知っている主人公が最短ルートで駆け上がる気持ちよさを楽しみたいかで分かれます。
まとめ
配信やVTuberを題材にした作品でも、配信者の日常を追うのか、コメント欄のノリで笑うのか、ダンジョン配信のバズを楽しむのか、未来の知識でやり直すのかによって、読み味は大きく変わります。今回の4作品は、企業所属VTuberの現実寄りの活動、配信事故から始まる兄妹コメディ、切り忘れから始まるバズ、先を知る主人公の成り上がりと、それぞれ違う角度から配信の面白さを描いています。
どれが上ということではなく、いま配信ものに何を求めているかで選ぶのがいちばんです。気になるタイプから、まずは一作品選んでみてください。