向いている人
追放後の穏やかな暮らしをそのまま読み続けたい人
1巻で食事と風呂に割かれていた紙幅は、2巻では温泉宿と祭りの買い物に引き継がれています。畳やユカタのある宿でくつろぎ、店を巡って服を選ぶ。事件が動き出す前のこうした時間がきちんと確保されているので、穏やかな空気を目当てに読んでいる人ほど満足度が高いはずです。
主人公夫婦以外の関係も見たい人
この巻から本格的に加わるのが、ロイの幼なじみである魔物使いのテオです。彼が抱えている過去と、保護された少女リミとの距離が、主人公たちとは別の軸として動いていきます。1巻がロイとユーリの二人にほぼ集中していたぶん、視線の置き場所が増えたのは素直に嬉しい変化でした。
ヒロインの規格外さを楽しめる人
ユーリは戦闘力だけでなく、学ぶ速さの面でも常識を外れています。魔物使いの修業として渡された分厚い資料を、こちらが身構える間もなく片付けてしまう場面には、思わず笑ってしまいました。彼女が魔物に好かれる体質であることも繰り返し描かれ、それ自体が物語の伏線として効いてきます。
正体が少しずつ露出していく過程が好きな人
1巻では輪郭しか見えなかったロイの前世が、2巻ではもう一歩だけ形を持ちます。本人が語るのではなく、うっかり見せてしまった技や、そばにいる人の反応から少しずつ滲み出ていく書き方です。隠している当人が自分で墓穴を掘っていく、あの感じを楽しめる人に向いています。
合わないかもしれない人
敵役にも筋の通った理屈がほしい人
勇者一行の描かれ方は1巻から変わっていません。加えて2巻では、最後まで一切救いのない振る舞いを続ける人物も登場します。悪役として気持ちよく機能してはいるのですが、そうなった背景が積まれているわけではないので、行動の理由まで納得したいタイプだと引っかかると思います。
世界のルールに理屈を求める人
身につけるものを一瞬で入れ替えてしまう魔法など、そんな仕組みが成り立つ世界なのかと考え込んでしまう設定がいくつか出てきます。作中でも成功率は低く、悪用できてしまうがゆえに扱いを制限されているという説明はきちんと付いているのですが、発想そのものに引っかかると笑って流しにくいかもしれません。
決着そのものに読み応えがほしい人
ロイが前に出た時点で、たいていの相手は長く保ちません。そこまで積み上げられた緊張が一手でほどけてしまうので、勝負の駆け引きや逆転の手触りを求めて読むと物足りなく感じるはずです。強い主人公を安心して眺める作品だと割り切れるかどうかで、終盤の印象が変わります。
感想・見どころ
※本記事は作品内容に軽く触れています。未読の方はご注意ください。
2巻の入り口は、ほとんど新婚旅行です。畳とユカタのある宿に泊まり、中庭の遊技で二人して大人げなく本気を出し、夜は高台から街を眺める。異世界の話なのに宿の設えだけがやたらと日本風で、そのちぐはぐさも含めて妙に居心地のいい時間でした。1巻で食事に割かれていた愛着が、そのまま場所を変えて続いている感じです。
その穏やかさを賑やかにしてくれるのが、この巻から加わる幼なじみのテオです。魔物使いとしては優秀なのに、こと恋愛では不器用という書かれ方で、ロイとユーリの甘さとは別種の見どころになっています。二組を並べて見せられると、主人公夫婦のいちゃつきぶりも少し許せてくるから不思議です。
この流れの中で、ユーリの規格外さが一段と際立ちました。修業のために渡された資料を半日で片付けてしまうあたりは、強さよりもむしろ頭の良さのほうが怖いくらいです。魔物に妙に好かれる体質も繰り返し描かれていて、彼女の出自にはまだ何かあるのだろうと思わせてきます。追放された側の底が見えないという構図は、1巻から確実に一段深くなりました。
一方で、勇者側の扱いについては1巻で感じた引っかかりがそのまま残っています。彼らの言動には相変わらず、自分がされたらどう思うかという視点がありません。ただ今回は、そこに輪をかけて徹底的に嫌な人物が加わり、こちらは逆に清々しく感じました。どんな報いが待っているのかを待ちながら読める分だけ、悪役として役目を果たしていたと思います。
その点で惜しかったのが、話を進めるための段取りが見えてしまう場面です。とくに、勝てないと分かっている相手へ理由も見えないまま繰り返し突っかかっていく人物には、そうしないと場面が転がらないからだろう、と勘ぐってしまいました。身につけるものを一瞬で入れ替える魔法のように、成立の理屈を考え出すと止まらなくなる設定もありますが、こちらは失敗して妙な格好になる形で笑いに使われていたので、作品としてはむしろ承知のうえなのだと思います。
そのうえで、終盤の盛り上がりはきちんと用意されています。数で押してくる相手に対して、味方が順に駆けつけていく組み立ては素直に熱く、とくに一番いいところを持っていく人物の登場には笑ってしまいました。決着そのものは呆気ないほどですが、ロイが参戦した時点でそうなるのは分かっているので、これはこの作品の作法として受け取っています。
まとめ
2巻で一番に残ったのは、温泉宿の夜と、拾った魔羊をめぐって一気に賑やかになっていく家の空気でした。主人公夫婦だけだった1巻から登場人物が増え、恋愛も騒動も二組ぶんになったことで、読み口はかなり軽やかになっています。一方で、勇者側の描かれ方と、物語の都合が透けて見える場面については1巻からの持ち越しで、評価は★3.5としました。刺激より居心地を求めて読む人に向くシリーズで、次巻はいよいよ舞台が海の向こうへ移りそうなので、そこでロイの前世がどこまで顔を出すのかを見てみたいところです。
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巻の始まりは魔族側です。追手に追い詰められた娘が、訴えを最後まで聞き入れられないまま断崖から身を投げます。場面が変わって、結婚したロイとユーリはユーリの修業のため幼なじみの家に身を寄せ、温泉宿での穏やかな時間を過ごしていました。その滞在の途中、浜辺で毒を仕込まれた刃に傷つけられた小さな魔羊を拾います。
手厚い看病の翌朝、その小羊は少女の姿になっていました。リミと名乗る彼女は角を持つ魔族で、名前も素性も伏せたままです。ほどなく保安部隊を装った追手が家を訪ね、彼女を捜させている魔貴族の存在が浮かびます。同じ頃、かつてテオと縁のあった人物が、都合よく使える働き手を求めて戻ってきました。
買い出しに出た祭りの町で、一行は思いがけない相手と行き合います。それが縁でこの国の頂点との対面に至り、ロイは望んでいなかった立場を引き受けることになりました。この場でロイが好奇心から使ってみせた技は、限られた者しか知らないはずのもので、居合わせた面々を面食らわせました。ユーリの顔立ちについても、聞き流せない指摘が持ち出されました。
依頼として引き受けたのは、霧に閉ざされ人が消えているという北の村の調査です。霧の仕掛けと、消えた人々の行方、そして黒幕の狙いがここで結びつきます。戦いのさなかにリミは隠していた力を使わざるを得なくなり、ロイの側も前世の記憶を取り戻しました。宿に戻った彼女は、自分が何者かを自ら口にします。
素性が知られた以上そばにはいられないと、リミは誰にも告げずに敵の城へ向かいました。追った者たちが劣勢に立たされ、遅れて駆けつけた面々が合流し、最後にロイが加わって場は片づきます。ただし黒幕は取り逃がし、彼女が生きていることは相手方に伝わってしまいました。待つのではなく攻めると決めた一行の行き先は魔王城に定まり、海を渡る手立てを探すことになります。エピローグでは浜辺に流れ着いた壊れた人形が拾われ、その素性が伏せられたまま次巻へ持ち越されます。
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